III.読書とその成果d.「甦る正倉院宝物」展e.奈良平城京跡,平城京資料館,奈良国立文化財研究所,法隆寺薬師寺等を見学。C.鎌倉国宝館等以上のように,古代日中間の仏教美術の親縁関係を見ることができる。これも敦燻においても法隆寺においても,美術品がよく保存されているからである。楊氏は以下の認識を得た。室町時代の美術品をみる。これは,中国の宋元時代に相当する。敦煙石窟の中には宋元時代の作品も少なくない。その中には,よい作品も多いが,しかし,総じて衰退期にある。鎌倉国宝館には名品が少なくない。木彫地傘菩薩像,力士像,等がよい。螺細槽笙僕,紫壇木画箱,墨絵弾弓,伎楽人形,廿竹篇,磁鼓,等を見て非常に有益であった。奈良国立文化財研究所ではその設備に,また,法隆寺では玉虫厨子の捨身飼虎図に感銘を受けた。f.京都では,観光バスで清水寺,知恩院,金閣寺,平安神宮,等をまわった。特に,清水寺の古朴,金閣寺の幽美に感銘を受けた。楊氏は読書を通じて,以下の成果を得た。講談杜の図録『日本美術全集』全24冊を通読し,日本美術の縄文・弥生・古墳時代より明治・戦前に至る建築・彫刻・絵画・工芸についておおむね全面的な了解を得た。氏はその専門分野の特徴に基づき,絵画と彫刻の二者のうち絵画に注意をはらったが,とりわけ日本絵画の空間処理の方法に目をむけた。氏によればこうである。縄文時代の絵画では,人物・魚・鹿・水鳥・建築物等の多くは平面に配列する画面処理をしている。弥生時代の絵画も同様で,奈良等で出土した弥生時代中期の土器の人物・魚・鳥等はすべて空間意識が見られない。弥生中期の銅鐸に描かれた人物・鳥獣は一-704-
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