列に並べられ平面の意識があるものの,空間観念は見られない。古墳時代には,一部の絵画に空間意識があるものの完全なものではない。奈良時代に至り,7世紀中葉頃の玉虫厨子須弥壇の捨身飼虎図では,地面・上下•前後等の表現がはっきりしたものとなってきた。その後,江戸時代前期に至る間に完成された日本画の空間処理法が見られるが,同時に空間意識のない作品も存在する。これは中国画の空間処理法と類似したものであり,(日本画の)風俗画・絵巻にいっそう独自の特徴が顕れている。明治時代にはだんだんと洋風画が輸入され西洋画の透視画法を参酌した作品が出現した。しかし,今日に至ってもなお日本画の空間処理法はその多くが伝統画法に則っていることに深く注意をはらわねばならない問題だと氏は考えている。日本絵画の空間処理,中国画の空間処理を西洋画の一点透視の空間処理法,現代の視覚科学を参考にして,氏自身の結論をひき出すことができた。総じて,この期間の読書を通じて,氏は『中国・日本絵画の透視』という研究課題を定めることができた。この研究課題をめぐって,さらに以下のような研究を進めた。ー,《日本美術全集》を再び読み,日本絵画における空間処理法の発生と変遷をいっそう理解すること。重点的に部分的な絵画を調査した。例えば竹原古墳壁画等史前絵画・玉虫厨子須弥壇の捨身飼虎図・法隆寺壁画金堂十号壁,正倉院螺細琵琶絵図.平安時代法華経絵・来迎図・源氏物語絵巻・聖徳太子絵伝・洛中洛外図・安徳天皇縁起絵・雪舟天橋立図および浮世絵,洋人奏楽図等等。二,『世界の中の日本絵画J(平山郁夫他著)の学習。本書は日本絵画を世界の絵画とりわけ西洋画を背景において考察したもので,有益である。氏の研究課題の角度はこの本と相通ずる処があり,この書には興味をそそられた。三,日本の学者の空間処理問題に関する著書『遠近法の誕生』(辻茂著)を読む。この書は西洋の透視認識の歴史を論じたものであるが,読解するにあたり多くの困難があるものの丹念に読んでいる。w.研究発表敦煙研究院副研究員楊雄氏「敦煙芸術と西洋芸術の比較」(通訳:楊達)1995年12月20日,成城大学大学院主催の講演会において下記の研究発表が行われた。-705-
元のページ ../index.html#716