② 超精細画像データベースによる美術研究(Hi-vision Television)の約三倍の解像力を持つ超精細画像データベースの実用化と報告者:東京大学総合研究資料館助教授西野嘉章東京大学総合研究資料館では,平成六年度から,学術資料の分散型桐密貯蔵と国際・国内共同利用を可能とする画像情報総合利用システム(Iconotheque)の実用化を準備してきた。また,平成七年度には,NTT光ネットワークシステム研究所と共同で,HTV取り組む一方,平成八年度から新たに発足する「総合研究博物館」に最新のマルチメディア・システムを敷設し,近未来型博物館のモデルとしての「デジタル・ミュージアム」(電視博物館)の試行テストを始めようとしている。本研究グループは,このマルチメディア・システムヘ美術文化財に関する画像情報を載せ,専門的な学術研究に役立ち得る画像データベースの構築を試みている。研究初年度にあたる平成七年には,ピラネージの版画総目録,江戸の絵画資料,近代の美術雑誌,明治の乾板写真,考古学の出土品その他について,各種画像データベースの試作を行うことができた。以下,初年度の事業について,その要点を簡単に報告することにしたい。1)趣旨東京大学にはいまだ調査の充分に行き届いていない美術文化財と,また美術史全般に関わる膨大な二次資料が保存されている。「保存」といえば聞こえも良いが,しかし現実には「死蔵」にも等しい状態にある。これらは歴史的・社会的にも,また専門的な学術研究の面でも大変価値の高い資料でありながら,存在が公にされていないため,外部の人々はもちろん,内部の教官や研究者さえそれを眼にする機会の持ち得ぬものが多い。こうした事態の拠って来る理由は明白である。一つには,資料管理が行き届かなかったため。もう一つは,ただでさえ時とともに劣化せざるを得ぬ希少な資料を教育研究の現場に貸し出せば,傷みの増幅されることは必定であり,ために利用の機会を制限せざるを得なかったからである。こうして貴重な学有文化財は,事実上,人の眼の届かぬものになっていた。学内の長年にわたる不活発な資料利用と裏腹に,コンピュータ技術やネットワーク-708--
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