通信は目ざましい発展を遂げている。現在では,インターネットを活用することによって,研究者が居ながらにして世界各地の大学,博物館,研究所,個人から発信される画像・文字情報を,音声情報まで含め,容易にやり取りできるようになった。こうした技術革新やインフラ・ストラクチャー整備を前に,教育研究を先導すべき大学が徒に手をこまねいていて良かろうはずもない。学有学術資料に関する情報を電子化し,その内容を学外に向かって送発信することは,いままさに大学へ課せられた責務なのである。歴史文化財をはじめとする学術資料を電子化(デジタル化)することの利得は計り知れない。ひとたびデジタル画像化された文化財は劣化の危険を免れ,情報を現状のままに固定することができる。しかも,画像の品位を裔めるなら,検索のインデックスとしての利用はもちろん,ある程度まで「一次史料」に近いものとして専門研究の現場でも役立ち得る。そのため,どうしても原史料にあたる必要の生じたとき以外はその史料を封印しておくことができ,結果として資料の活用と保存という,これまで矛盾し合うと考えられてきたふたつの要請へ同時に応えることができるからである。さらに,各種のデジタル情報を相互に関連づけ得るようなかたちでデータベース化し,それをマルチメディア・システムを通して利用できるようにするなら,学術資料の利用価値は一段と高まろうし,またそればかりでなく,以前なら考えられもしなかったような斬新な分析方法,これまで存在したことのないような超域的な研究領域の開拓される可能性もある。2)方法データベース構築作業は学術資料をデジタル化することから始まる。ただし,「学術資料」とひと口に言っても,様々な形態があり得るため,個々の資料特性に応じた方法が個別的に適用されることになる。平成七年度には,すでにフィルム(35mmあるいは4X 5)媒体に記録されているものを中心にデジタル化作業を行ったが,必要に応じて他の手段を用いたケースもある。電子スチール・カメラ,フラット・ヘッド・スキャナーなどによる直接的な入力方法がそれである。また,美術雑誌のように,程々の画質で将来的にも用が足りると判断されたものについては,35mmのフィルムで撮影後イーストマン・コダック杜のラボに依頼し,デジタル画像情報を磁気ディスク媒体上に保存する処置を採った。-709-
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