(3) 国際会議出席国際会議名:イタリア,オルヴィエトで開催のシンポジウム「日本絵画の伝統と現代性」(Tradition and Moderity in Japanese Painting) 出席者:学習院大学文学部教授小林期間:1995年12月8日〜1995年12月11日[講演:狩野派の伝統]ただいまご紹介いただきました,小林忠です。「Giapponein Italia」の行事の一環として行われますこの,日本絵画の伝統と時代性に関する国際シンポジウムにお招きをいただきまして,大変嬉しく,また光栄に思っています。今回お誘いくださったヴェニス大学のカルザ先生によれば,ご当地Orvietoには,14世紀初めの美しいカテドラルがあるとのことで,それを拝見することとおいしいイタリア料理をいただくことも,楽しみにして参りました。カテドラルは,早速今朝早く見学に参りました。カルザ先生のお言葉通り,また私の期待にたがわず,実に壮麗で,感動いたしました。お料理の方は,昨晩トリュフのパスタとオルヴィエトのワインを堪能させていただきました。うかがうところによればこのシンポジウムと平行して,近くのPalazzodei Setteでは,狩野派の古い絵画作品と,狩野派の末裔に当たられる狩野紘信氏の近作の,二つの展覧会が開かれている由です。私は昨日の夜にご当地に着いたばかりで,まだ見ていませんが,これらの展覧会に因んで,これから狩野派の伝統と時代性について,お話しさせていただこうと思います。狩野派は,日本の中世から近世にかけて,すなわち15世紀半ばから19世紀の末まで,4世紀以上の長きにわたって繁栄した絵画流派です。しかも,日本では必ずしも珍しいことではありませんが,美術の世界でありながらこの流派は,先生から弟子へ受け継がれるだけでなく,親から子へ,子から孫へと,代々血縁でつながっているのです。そして,初代の狩野正信が武家(さむらい)の出身であり,画家となってからも足利将軍家に仕えて活躍したように,狩野派の基本的な骨格の部分は武家としての性格忠-720-
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