かのうながのぶひのきかかゆうらく6.狩野長信花下遊楽図屏風17世紀初期7.(筆者不詳)調馬(馬を調練する)図屏風17世紀初期人もいました)を満足させたのでした。永徳が作画を依頼されたのは,多くの場合当時の記念的な城や御殿などの障壁画だったので,代表作とすべき作品のはとんどは,戦争や,権力者の後退の際に焼失したり,破壊されてしまい,現在まで残るものはきわめてまれです。ここに示す唐獅子図は,そうした数少ない貴重な遺例の一つで,豊臣秀吉が野外の陣地で使った屏風の絵と伝えられているものです。雌雄一対の唐獅子が堂々と歩を進める図は,まさに英雄的な時代を象徴しているかのようで,感動的です。5.狩野永徳檜(Japanesecypress)図屏風1590年頃狩野永徳が亡くなる1590年に建てられた御殿の襖絵だったものです。後に,より小さな屏風画面に改装したもので,当初の雄大な構図が損なわれています。これらの枝は図柄がつながっていません。しかしながら,巨大な樹木の圧倒的な生命力を画面に全開させた表現力は,永徳以外の誰のものでもないことが実感できます。英雄的な武将が国中の戦場を駆けめぐり,冒険的な商人が東南アジアやアフリカの沿岸にまで進出していった,この時代の日本人の意思と熱情の激しさを象徴しているような大作です。左のスライドは,狩野永徳の弟の狩野長信が描いた屏風画で,春の花の木下で美しい男女が輪をつくって踊り,それを若い貴公子がベランダの上から眺めているという,華やいだ場面が描かれています。右のスライドは,誰と名前は確かめられませんが狩野派の画家による屏風画で,多数の武士が馬を調練している様子を描いています。安土桃山時代には,同時代に生きる上下の人々の現実の生活に取材したこれらのような風俗画が,絵画の主要な画題と成ります。宗教的な主題や,文学的な主題など,古典の教養を必要とする従来の絵画主題のほかに,近世初期のこの時代には,花鳥画とならんで,風俗画が大いに流行したのでした。狩野派は,率先してこの新しい主題分野に挑戦し,屏風や襖などの大画面に多くの優れた作品を残しています。-724-
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