鹿島美術研究 年報第14号別冊(1997)
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書25点。)を基礎データとして採用している。そこでは,各作品に押捺された印章を抽2.制作年代からみた作品分布37歳1件(書)。42歳1件。43歳l件。48歳2件。49歳1件。60歳1件。62歳1件。64歳3件(書1件)。69歳1件(書)。70歳5件。71歳5件(書1件)。72歳1件(書)。73歳3件。74歳5件(書1件。ただし4件はもと1幅)。75歳1件。議が尽くされたとはいい難い。また,それ以降の作品に対しても,例えば基準作を設定し,作品の編年を具体化させていく作業については不十分なままとり残されているのである。ところで,玉堂筆と伝えられる作品に,かなりの数の偽筆が混入していることは周知の通りである。筆者の場合も,真筆に倍する数の偽筆に対面している。それらは入手の経緯などから推して,大部分は明治・大正期に贋作され,遅くとも昭和初頭までには市場で流通していたもののようである。そして,これら玉堂画の真贋の判定に際し,重要な判断基準となり得るのが,作品に押捺された印章の良否である。しかも,使用印に着目することは,この作品の評価に関わるだけでなく,制作時期をうかがう上でも欠かせないと認められる。本稿はこうした観点から玉堂作品の編年にアプローチし,基礎データの構築を試みるものである。1.調査の概要今回の調査に当たっては,現時点で玉堂自筆と目される作品262件290点(画265点,出して整理分類を行うと同時に,あくまで私見であるが,制作時期についての推定を試みた。ただし,対象作品のすべてを実見した上で,データ化したものでないことをお断りしておきたい。その最大の理由は,玉堂画の大半が個人所蔵に帰するため,実地調査が困難であったことにほかならない。さらに現在,所在確認ができなかった作品も相当数にのほ‘っている。そこで,未見の作品については,良質の写真ないしは図版が入手できたものに限り,データに加えている。また,「煙霞帖」のように12図1帖の作品については1件12図とし,1幅4図の「園中書画」などについても1件4図とした。しかし,それが現在改装されて4幅となっている場合は4件4点としている。玉堂作品の編年作業を困難なものとするのは,制作年を確定し得る作品の絶対数不足である。一応,確定作品の制作時の玉堂の年齢とその作品件数を挙げてみる。-92 -

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