6.印章の組み合わせと使用年代るが,印つきについては,押捺の状況によって作例ごとに随分むらがあるように思われる。外形は縦1.3糎,横0.9糎,高3.2糎で,把手部分に複雑な模様が刻まれた玉製の印章である。ずかに3例が知られるのみである。また,木製であることも,玉堂所用印として異例といえる。外形は縦3.7糎,横2.1糎,高2.7糎で,重量的にも軽い。なお,これらのうち,J • T • Iの3種は,時に逆さに押印されているものが見受けられる。小さい印であり,おそらく玉堂の視力がさほど良くなかったことも相侯って,向きの確認をせずそのまま押すという誤りを犯してしまったのであろう。もっとも,描くことに熱中するあまり,画布への墨こぼしさえ平然と無視する(注7)ような玉堂の性格を考慮に入れると,この程度のことに頓着するわけはなかったと思われる。これについては,<表3〉を参照していただきたい。玉堂が24種の印章を単独に,あるいは複数で使用したパターンを示し,それぞれかどの時期の作品に用いられたかを表したものである。ここで凡例を記せば,印章欄の斜線より前側部分のアルファベットについては,それが署名位置に押印されていることを示し,アルファベットが複数の場合は,先の印が上方に押捺されていることを示す。他方,斜線の後ろ側は間印であり,関防印もしくは遊印として用いられていることを示す。?とあるのは印文が不明のもの。HIJ賛Iと表示されているものについては,HIJ印の既存の自作に,69歳時に賛文(I印)を追加したもの。なお,年齢横のマル囲みの数字は該当作品数である。「R玉堂茉士監勅拓口」は伝存印としては例外的にほとんど使用例のない印章で,わ-99 -
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