• D' 目されるのは,器種が豊富なことで,花形蓋や馬山杯,蓋,壺,鍔縁皿などがある。このようなセット関係は,以下のBの窯と共通する。このタイプに属する窯は,軍浦山本窯と光州忠孝洞窯,保寧龍水里窯のうち,良質白磁製品である。これらの窯は,Aと同じく,器種に花形蓋,蓋,壺,鍔縁皿が見られる。しかし,作りはむしろ官窯のうち,粗製品の窯に近似し,奥川里5号窯と同じく,胎土目を重ね焼きの際に用い,ときには高台裏に釉薬を施さない。また,釉色が黄味や青味を帯びるのを特色とする。中央官窯に地方窯のエ人が派遣されて,陶磁器生産に従事した記録が『経国大典』にみられるが,AとBの関係は,この記録を証明するものと思われる。全羅道谷城郡元達里窯は,非常に上質な白磁が出土している。器種構成は単純であるが,今後こちらのタイプに分類される可能性もある。嘉靖三十三年銘(1554年)墓誌の出土した奥川里5号窯のような匝鉢を用いない粗質の製品を焼成した窯である。器種は,鉢・皿・蓋.瓶などに限定され,ここから出土した製品の特徴は,器形が型式分類が不可能なはど様々であるが,高台径が小さく,ロ部の大きく外反ものが基調をなす。高台は,釉薬は全面に施されず,重ねて焼成するための胎土目が畳付きに配置される。釉調は灰色をおび,胎土も粗い製品が多い。このタイプの窯は,慶尚道,全羅道に集中している。慶尚道地域の窯の発掘例は少ないが,現段階で編年的に構成するならば,多富洞窯→放牧里窯→白蓮里窯・金海郡徳川里民塞出土品の一部となると思われる。また,保寧龍水里窯の粗質白磁の製品もこのタイプに属する。これらの製品は,奨川里5号窯と同じく,内底に円刻をほどこした鉢・皿・蓋という基本器形を基準とするが,胎土の粗さが特徴的で,全面に釉薬が施されず,胎土目痕が畳付きに残される。高台の作りは,以上の窯と同じく,竹節高台と垂直高台が混在するが,放牧里窯や白蓮里窯のように高台の一部を削るなどの特色をもつ。また,釉薬も特徴的で,黄色味を帯びた釉色に,細かい貫入がみられ,卵のような釉肌となっている。このタイプの窯は,今回の調査で2箇所確認でき,いずれも慶尚道・全羅道であった。発掘担当者によって,白磁となったり,朝鮮青磁,粉青と様々な名称があてがわ・B ・D ・C -140-
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