岡)や「大分現代美術展」「ファーレ立川」「水の波紋'95」(東京)など全て都市空間に作品を展示する試みである。屋内外を問わずあちこちに作品が配置されている。いわば町全体が一つの美術館というわけである。全ての作品を辿るには地図が不可欠なため,鑑賞はオリエンテーリングの様相を呈する一方,通常その場で生活している人々にとっては作品の出現によって自らの生活空間に異化作用を被る。新しいスタイルによるこうした展覧会の隆盛から,近年「パブリック・アート」の問い直しや功と罪にまつわる議論が高まっている。私はこの試論で敢えて屋外作品に「パブリック・アート」という言葉を用いずに話を進めてきた。美術とは何か明示し得ないように,パブリック・アートもそれだけでは何を指しているのか,何を求めているのか非常に曖昧だと感じてきたからである。屋外に設置される作品を「パブリック・アート」と見なした瞬間それぞれの作品を巡る状況や特質は一般化され,パブリック・アートという概念に振り回されることになる。重要なのは言葉や概念にとらわれることではなく,一つ一つの事例にあたり少しずつ分析を進めていくことではないだろうか。その意味で今回作成したデータベースは多少なりとも屋外作品の見直しに際して一助を担うことができるのではないかと考えている。屋外作品の成立と展開,機能には,作家だけでなく作品の展示・設置を推進する人々の存在や場の状況,作品を享受する側の受けとめ方などが作用していることを念頭に置いて今後もデータベースの拡充と調査研究につとめたいと思う。今回提出するデータベースはクラリス社のアプリケーション・ソフト「ファイルメーカーPro3.0」によって作成された。データベースはネットワーク上で共有ファイルとして利用することが可能である。時間的要因また私自身の未熟な技術力から十分なデータベースの構築には至らなかった。取り込んだ画像は全て雑誌やカタログなどすでに一般に公表されている資料を利用したが,営利目的ではない実験的な試みとして今回著作権の申請は行っていない。今後さらにこのデータベースを充実させ一般の利用に耐えるものにするには,作家や主催者に直接訴え資料提供の協力を仰ぐとともに,著作権の問題を解決していく必要がある。またデータベース自体,より快適に利用できるよう改善が求められる。個人的には独自に収集した素材を含め,今回収録しきれなかったイヴェントやハプニング,1991年以降の活動について資料をまとめ,静止画像だけでなく音や動画も収録していく予定である。それによって,美術館・画廊という既存の展示スペースを離れた美術の動きを広く展観することの出来る資料となるだ-223-
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