2.イタリアの近代美術館の位置づけと分類1872年ミラノ,1880年トリーノ,に続いて1883年にローマで国が主催した展覧会が開イタリアの近代美術の収集,あるいはその展覧会が実施されるのは,1860年代にイタリア王国が国家統一を成し遂げたことを外に向かって誇示する側面を持っていた(1860年南部統一,1870年ローマ占領によって完了)。1861年フィレンツェ,1870年パルマ,かれる。この展覧会で19世紀のイタリア美術が紹介され,大衆に支持されたことを受けて近代美術の購入予算が認められる。1909年からはヴェネツィア・ビエンナーレで発表された外国作家の作品の購入,また国内の個人コレクターからの多くの寄贈によってコレクションは形成される。1911年,イタリア国家統一50周年を記念した万国博覧会がローマで開かれ,その際,シーザ・バッザーニによって設計された美術館施設が利用されて,1915年から国立近代美術館として開館した。その後,現在に至るまで,国立の大規模な近代美術館はローマのみである。その他イタリア政府が所有する近代美術は小規模なものか(ナポリ),あるいは一部の寄贈作品である(ミラノのブレラ絵画館)。市立の近代美術館で収蔵品数が多く美術館教育などが整っている大規模館は,トリーノ市とミラノ市をあげることができる。その他,地域別で見れば,ピエモンテ州ではアレッサンドリア市とアスティ市。ロンバルディア州はベルガモ市,ブレシア市,ガッララーテ市。リグーリア州はジェノヴァ市。ヴェネト州はバッサーノ・デル・グラッパ市,トリエステ市,ウーディネ市,ヴェネツィア市,ヴェローナ市。トスカーナ州はフィレンツェ市,アレッツォ市,ピストイア市。エミーリア州はボローニャ市,フェッラーラ市,モデナ市。ラツィオ州都のローマ市にもおよそ50年間閉鎖したままの市立近代美術館がある。南部では,プーリア州のバーリ市,フォッジア市。シチリア州のパレルモ市にある。さらにサルデーニャ州都のカリアリ市にもある。その他,様々な機関により設立,運営されている近代美術をあつかっている施設がある。個人的な財団,銀行や保険会杜,大学などである。また,近年の傾向として,半官半民の近現代美術館が誕生してきている。以下,調査した美術館の中で,イタリア19世紀美術の取り扱われ方を調査報告したい。-228-
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