鹿島美術研究 年報第14号別冊(1997)
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3.イタリアの近代美術館における19世紀美術の位置(調査)30年間館長職を務めたパルマ・ブカレッリによる20世紀を中心とした展示から,正面年8月ー9月)には,その事業の最初の段階として左手施設の全面的な改修工事が行(1800年代イタリア美術)」と明記され,イタリア19世紀美術の常設展示施設が見事に1901)のくアテネ公追放〉(1861)の下絵が納まっている(完成作はフィレンツェのピa.ローマ国立近代美術館〔図1〕付録とした資料にも明記したが,現在,ローマ国立近代美術館は1996年から1999年までの計画で大規模な改装を行っている〔図2〕。現在の美術館の展示施設は大きく分けて3つの構成となっている。正面から,開館時にバッザーニによって設計された新古典様式の施設,その裏には同じ建築家の手による1934年に増設された施設,さらにその裏手にはコセンザによって1988年に設計された2階建ての近代建築物がつながっている。今回の再編成には2つの大きな目的がある。戦前から館長職にあり,戦後もの施設に19世紀美術,裏手の施設に20世紀美術,さらに最後方の施設に版画や素描室と企画展示室といった構成に大きく変更する目的か一つ。その並べ替えのために,戦後の混乱期以降,未使用状態になっている施設の左手部分を含めて,正面とその裏手の旧展示施設を大きく改修する事業が同時に行われている。調査を行った時期(1996われていた。そのため,左手施設に展示されていた19世紀末から20世紀初頭にかけての分割派の作品と,同時期のヨーロッパの巨匠達の作品は,近年建てられた最後方の施設の2階部分に移されていた。同時にその1階部分にはイタリア19世紀美術のコレクションが様式別に整然と並べられていた。1994年の調査(注2)では,19世紀美術は公開されていない,という報告もあるので,将来の編年的な展示のために,近年準備されたものであろう。現在,仮設の状態とはいえ,その最も新しい施設への導入部分に「L'OTTOCENT姿を現している〔図3〕。まず入口付近は,18世紀末の汎ヨーロッパ的な動向としてロマン主義と新古典主義様式の作品が並べられている。次に左回りの順序で「新古典主義の文字どおりの参照」というコーナーから始まり,「古典主義の小品」,「純粋主義と宗教と騎士道の主題J,「風景画に見られる保たれる18世紀の伝統J,「吟遊詩人の主題」と,展示室の左半分はイタリア統一以前の,14,15世紀イタリア芸術への復古的な動向を示す作品群が並べられている。展示室左半分を巡り,入り口の反対側の壁面は「国粋主義的ロマン主義の主題」となり,コーナー最後にはステファーノ・ウッシ(1822--229-

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