鹿島美術研究 年報第14号別冊(1997)
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注(6) 本稿では詳しく取り上げる余地がなかったが,彼の「捕鯨船のスケッチブック」(7) 拙論「J.M.W.ターナー:大海に棲むもののイメージ心地となっていたアメリカに目を転じてみるべきであろう。その詳細については今後の研究の課題としたいが,数度にわたって北板探険の旅にカメラを携えて同行したウィリアム・ブラッドフォード(1823-92)〔図19〕や,1859年に氷山を求めてニューファンドランド方面に船出したフレデリック・エドウィン・チャーチ〔図20〕は,かつてターナーが試みた科学とロマン主義的想像力との結合を,いっそう徹底したかたちで実現させたといえよう。(1) この作品の詳細については,MartinButlin & Evelyn J oll, The Paintings of J.M. W. Turner, New Haven and London, 1984, pp. 236-237 および注7の文献を参照されたい。(2) これらの作品に関する総合的な解説は,ibid.,pp. 260-263, pp. 267-268, pp. 270 -271を参照のこと。(3) Thomas Beale, The Natural History of the Sperm Whale…to which is added, a Sketch of a South-Sea Whaling Voyage, London, 1839. ターナーのタイトルで言及されている『航海記(Voyage)』の部分は,同書の初版(1835年)には含まれていなかった。(4) John Gage, exh.cat. Turner 1775-1851, Tate Gallery & Royal Academy, London, 197 4-1975, p.189. (5) T.S.R.Boase, "Shipwrecks in English Romantic Painting", in Journal of the Warburg and Courtauld Institutes, 22 (1959), p. 344. (1845年頃,テート・ギャラリー)ほかに含まれている捕鯨主題のスケッチや,1846頃に描かれた極地の風景のヴィニェット(英国,個人蔵)等を見ると,ターナー自身,後述するような博物学関係の書物のために挿絵を制作することを計画していたと思われる。これについては,RobertK. Wallace, "The Two Antarctic Vignettes", in Turner Studies, Vol. 9 No.1 (1989), pp. 48-55 およびAnne も参照のこと。《奴隷船》を中心に」Lyles, exh. cat. Turner and Natural History, Tate Gallery, London, 1988 -276-

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