像には,神奈川・無量光寺一遍上人立像,愛媛・宝厳寺同像,京都・長楽寺同像,山梨・称願寺他阿真教坐像,広島・常称寺同像,東京・法運寺同像,京都・長楽寺同1奇像宮城・真福寺五代安国上人坐像京都・長楽寺六代ー鎮上人坐像,広島・西郷寺同像新潟・称念寺同椅像京都・長楽寺十三代尊明上人坐像,同寺十四代太空上人坐像同寺十五代尊恵上人坐像同寺十七代暉幽上人坐像,京都・迎称寺伝一鎮上人坐像など多くの像があり,像の形式(立像・坐像・1奇像),形姿,作風(七条慶派仏師系など)に広い展開がみられる。また,肖像彫刻造立の風儀は遊行上人にとどまらず,時宗諸派の派祖上人,各地の時衆道場寺院開山像,歴代住持像などに及んだ。滋賀・高宮寺切阿上人坐像,京都・双林寺国阿上人坐像などが代表的な像である。時宗の肖像彫刻は,中心勢力である遊行派が,檀那でもある七条慶派仏師と密接に関係しており,長楽寺諸像をはじめ歴代慶派仏師の作例が中核となっている。また,浄土宗・浄土真宗の中世の作例が,坐像を基本形式とするのに対し,多形式の広い展開を持つ点はなはだ特徴的といってよい。また肖像彫刻造立に関し真宗のような宗規はないもようで,近世作にいたるまで形式,数量とも広く展開する。(二)ここで本研究の対象としてあつかった諸像の内から,浄土系肖像彫刻の比較検討の際,基礎的存在といえる作例や,制作年代・像主などに検討を加え,あらたに評価を与えておくべき作例の幾つかについて,形姿・作風を踏まえ,注目点・問題点に触れつつ,紹介してみることとする。〔浄土真宗作例〕(1)伝親鷹聖人坐像横浜市・東福寺像高47.4センチ〔図1〕等身よりかなり小ぶりにつくられた像で,内衣・法衣を右前に打ち合わせて着け,その上に袈裟を着ける。袈裟は大小威儀をもって左肩に懸け,大威儀は平帯状で,左胸で結び目をつくり,その端は垂下する。両袖は体側に垂下して,両側に張り出さずに小さく表される。形勢は正面を向き,やや背を丸めぎみにして践坐し,右腕は屈腎して右膝に手首を置き,左腕は屈臀して袖口を浮かせるが,共に手先を亡失している。念珠を両手で爪ぐるかたちの像(例えば新潟・西照寺親驚聖人像)と左右腕の上下位置が逆なところより,当初,払子・念珠を執る像であった可能性が高い。構造は頭鉢幹部を前後に割り矧ぎ,襟で割首とし,これに,両体側材,脚部材,背板材,両袖ロ--293-
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