鹿島美術研究 年報第14号別冊(1997)
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ションによって行うという仕組みをとっているが,このシステム構築の方法自体は何等独自のものではなく,サーバーソフトWebSTARの一般的な運用方法といえる。4)関連資料の追加この画像データベース構築ソフトを使用しない,画像ファイルとHTML言語によって記述されたテキストファイルをURLによって管理するシステムの利点は,WWWブラウザーソフトの特性に依拠したマルチウンドウ表示システムによって複数の画像とテキストを並べて表示できる点にある。「ピラネージ版画画像データベース」では,ピラネージの版画作品の画像データを各種関連資料の結節点として考えている。すなわち,HTML言語の特性であるハイパーリンク機能により,作品図版の基礎的文字データをはじめ〔図5〕,関連文献や関連写真図版などをつぎつぎにリンクさせていくことによって,データベース内に蓄積するデータを充実させていくことが可能になっている。例を挙げれば,『ピラネージ版画集』て現在の姿を撮影した写真イメージを付加し,ブラウザーソフト上で新しく別のウインドウを指定して表示させることによってピラネージの版画図版との比較検討が可能になる〔図6〕。さらに,こうした資料の追加は無制限に可能であるため,長い将来にわたってさまざまな種類のデータの蓄積を行うことができる上,それぞれのデータに別の秩序づけを行うことで,ピラネージとは直接関係を持たないデータベースヘの再編成も可能となる。こうした自由度は現行のデータベース構築ソフトの中では特にリレーショナル・データベースと呼ばれるソフトにおいて実現可能であるが,設計やプログラムに熟練が必要である点と,いまだパソコン・レヴェルではインターネット上での公開が不可能である点で,本研究のシステムが推奨されうる。本研究において報告された検索システムは,必要なソフトを入手し,データを作成すれば,あとは以下のCGIアプリケーションのプログラムに必要に応じて設定する項目欄を変更し,流用することによってすぐに実現が可能である(注13)。そして,このプログラムの流用によるシステムの共有という敷居の低さは,今日までインターネットの普及を支えてきた重要な要素のひとつである。美術史研究において作品の精細な画像データと碁礎的データもまたインターネット等を通じて広く共有されてしかるべき領域であり,また大学機関による学術資料と研究成果の公開は,国際的な学術成果1 ■ 4巻に相当する『古代ローマの遺蹟』のシリーズについては,個々の遺蹟につい-349-

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