鹿島美術研究 年報第14号別冊(1997)
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資料1.『廃墟としてのマイセンの聖堂』(消息不明)に関する手紙「今私は再び大きな油彩画に取り組んでいます。高さが3エレ12ツォル,横幅が2エこの絵でも崩壊した聖堂の内部が描かれています。しかも,今でも無事に建っていて,よく保存されているあの美しいマイセンの聖堂をもとにしました。内側の空間いっぱいにつまっている瓦礫の山からすらりとした優美な円柱がついた堂々たるピアがそびえ,まだ部分的に残っている高いアーチを支えています。寺院とその僕の栄光の時代は去り,すべてが破壊されたところから別の時代が,そして明晰で真実なものへの別な要求が生じてきたのです。高くほっそりとした常緑の唐檜の木々が廃墟から生えています。そして,崩れかけた聖人像,壊れた祭壇,割れた聖水盤のところには,左手に聖書を持ち,右手を胸に置いたプロテスタントの牧師が,司教の記念碑の残骸にもたれて,目を青空に向け,物思いにひたりながら,明る<薄い雲を見つめています。」S.102) 資料2.聖マリア教会の内部装飾のための構想図についての解説(1818年)「神の崇拝のためにそのように決定されている建物は,私の考えでは,できるだけ簡素に整えられなければなりません。歩み入る人は,一目で全体を見渡すことができなければなりませんが,この一目は,できれば心情を高め,心底を徹底的に探る方に対してへり下る気持ちにするものでなければなりません。少なくとも,清らかな,純粋な心をもっているような人が教会の中に入り,不快な配置と無定形な装飾と飾りすぎによって,彼の気分が妨げられてはなりません。神の前では誰彼の差別はなく,神に対してへり下るために人が集まる建物は,そこでは,あらゆる身分の違いは正当になくなるはずでしょう。そして,富める者は,少なくともこの場所では,彼が貧しい者以上のものではないということを感じなければならないし,貧しい者は,我々が神の前ではみな平等であるという,目に見える慰めをもつ必要があるでしょう。」レ12ツォル(高さ約200cmX幅約144cm)あり,今まででいちばん大きいものです。……(Hinz ; Caspar David Friedrich in Briefen und Bekenntnissen, Milnchen 197 4, (Stralsund, Archiv und Archivbibliothek der Stadt, Au 218) -364-

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