鹿島美術研究 年報第14号別冊(1997)
396/590

宇部市宗隣寺庭園は,案外に写実的な,帆船のような夜泊石が目立つ。また,その石の様式は,中国好みの太湖石みたいな奇怪な石を十分使っていた。これも鹿苑寺の稀な例の奇怪な「九山八海」石を覚えさせる。ここでは,また蓬莱の神話を説話的に拡張しているところは,また宋時代の影響が伺われる〔図8〕。岐阜県,多治見市の永保寺は,宋時代様式の僑からの固まった観点から見るべく自然の山の滝が新しい要素を見せる。ここでは,室町時代の瞑想的な観点が初めて見られる〔図9〕。鳥取県,米子市の幅田氏庭園では,また優れた直喩的形を持つ鶴島〔図10〕と亀島が小園にある。ここで使う石も案外に中国好みの奇怪石と似合うもので,また裏に三聰の組が高く盗えているところもいかにも宋時代の主流を暗示すると思われる。-387-

元のページ  ../index.html#396

このブックを見る