2 3 4 5 6 7 8 を厚く具引きしたもので,全体で10枚の紙を継いであり,各紙の実測値は下表の通りである。これらの紙の大きさ(横長)を比較すると一つ興味深い問題点を指摘できよう。それは,第2■ 5紙が93.5cm前後,第6■ 9紙が90.5cm前後と,それぞれはぼ同寸の紙が継がれていることである。もっとも,冒頭の第1紙と巻末の第10紙はそれぞれ若干短くなっているが,これは表装の際にそれぞれ図柄をぎりぎりに残して両端を切ったものと考えてよいであろう。すなわち,第1■ 5紙までの前半と第6■10紙までの後半で,異なる大きさ(横長)の紙が用いられているのである。各紙の大きさこの前半から後半へかかる部分には,画面下部に金泥で土域が描かれている。つまり第5紙から第6紙にかけて一続きの図柄がおかれているのであるが,この間の紙継ぎ部分を詳細に観察すると,下層に軍ねられた金泥の面は紙継ぎの左右で繋がらないところが多く,また,金泥をむらむらに広げる筆の動きが紙の端で止まっているように感じられる〔図1〕。そして,この上層に,左右にわずかにはみ出させながら,紙継ぎ部分をまたいで金泥が塗り重ねられており,また,紙継ぎでできた段差部分に金泥の溜まりができているのを認められる。すなわち,この土破は第5紙と第6紙に別々に描かれたものを,紙を継いだあとに金泥を加えて図柄を連続させたものと考えてよいだろう。その他の紙継ぎの部分では,図柄は完全に連続しており,金銀泥ののり方をみても先に継いだ紙の上から描かれたものであることがわかる。したがって,本作の制作過程としては,前半の第1■ 5紙と後半の第6■10紙は分けられた状態で制作され,あとから繋がれたものと認められる。ただし,筆致や構成の点からみて,前半・後半を別々の作品とは考え難く,両者はもともと一つの巻物として全体の構想のもとに作られたものであることは確かであろう。後述するように,宗達の金銀泥絵は淡い泥や濃い泥,さらには水分をも含めて,何度も筆を加えながら描きすすめたものと考えられる。おそらく,図柄や金銀泥の濃10 ,89.6 I 90.5 I 9~器:j蜀|93 5 | 937 1 93 8 | 935~| 91 :'rI横:(しm) 天地(縦長)は第1紙右端で33.8cm。ー紙継ぎ-391-
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