conservatorにとっての予備知識engineerにとっての目的の部分が重複するだけで5 おわりに教わることもあるだろうし,アメリカにおいては,これら美術館博物館のengineerが集まり,協会を設立し勉強会を設けていると聞いている。これら横のつながりによる情報交換もあるだろう。しかし何より彼らは美術館博物館がなんであるのか,また自分が管理する部門が美術館博物館の機能の中でどのような意味があるのかをよく理解し勉強しているということである。そしてなにより彼らは自分の美術館を誇りに思っている。また美術館の所蔵作品を愛しているという事実である。彼らは自分の愛すべき作品を彼らのできる方法の中で守ろうとしているのである。空調設備のエンジニアについての補足を述べると彼らは通常の工学部の出身であり,学生時代に特に美術館博物館管理を専門としてきたわけではないようである。ここまでは日本の実状と変わりはない。この意識の差は相互の信頼関係に即座に関係してくる。アメリカのconservatorは自分たちの活動の範囲内だけで作品が守れるとは考えていないし,これらの問題は信頼できるengineerが責任をもって任にあたっているということを信じている。またそのことをengineerも知っている。このことは別表の質問事項とその分野を把握している部門の分かれ方をみてもらえばわかることである。例えば空調管理に関していえば,ある。この関係はまた上下関係等といった関係でもない。目的について共通理解が成立し,その上でお互いの専門性を尊重しかつお互いの守備範囲をよく理解した上での関係である。近年マスコミ関係でも美術館博物館の建物先行,ソフトの欠如が問題として取りぎたされているが,問題はマスコミで取りざたされている美学美術史の専門家だけではないということを強調する。美学美術史の専門家が美学美術史の研究に専念できる環境になるには根本的な問題の解決が必要である。また一部に盛り上がっている保存担当学芸員の増員という気運だけでも焼け石に水である。なぜならこれらの問題が解決しない以上,各美術館博物館の保存担当学芸員はengineerとregistrarと清掃員の仕事の合間に本業をこなさなければならなくなるからである。しかし優先順序としてはこれらは決して無視されるべきものではない。これらの円滑な運営がなければ保存担4-3 信頼関係-469-
元のページ ../index.html#478