鹿島美術研究 年報第14号別冊(1997)
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3.中尊寺に伝えられる仏具手史学研究』70号所収〕)等の説が提出されてきた。筆者は近年,東京国立博物館に保管される金色堂が明治三十年から翌年(1897■1898)にかけて修理された際の模写図を援用して,須弥壇の工芸意匠すなわち格狭間内の孔雀や宝相華文金具をはじめ八双金具や螺細の当初部分を現状のなかでみきわめ,それぞれに関する基礎的データを提示し,そのデータに基づいて格狭間内の孔雀や宝相華文金具にくわえ,八双金具を比較検討し,各壇造営の前後関係の問題について考察した。その結果,金色堂須弥壇は,格狭間内の孔雀や宝相華花枝文,八双金具,螺細の文様のいずれも,西北壇の工芸意匠の方が西南壇よりも中央壇により近いとみなすことができ,同須弥壇は中央壇から西北壇,西南壇へと展開していることが理解された(拙稿「中尊寺金色堂須弥壇の現状と明治の模写図」〔『東京国立博物館紀要』30号所収〕)。本調査研究はこの金色堂須弥壇造営経緯の問題をさらに総合的に解明するために,同堂所用の伝えを有する堂内荘厳具に着目し,その工芸意匠・制作技法に関する基礎的データを従来収集した須弥壇に関する資料と詳細かつ厳密に比較検討し,考察をすすめようとするものである。現在,中尊寺に伝存する主要な仏具をその用途別に分類すると,おおよそ以下のようになろう。(1) 荘厳具① 堂内荘厳具螺細八角須弥壇1基,八稜天蓋1基,半肉彫円形天蓋1基,金銅透彫華墟6枚,金銅透彫幡頭3枚,螺細卓1基,金銅荘小卓1基,螺細小卓1基,螺細礼盤2基,蓮華唐草蒔絵大壇1基,天蓋擬宝珠1基。② 経荘厳具一切経経箱266合,一切経唐櫃13基,経筒1口。(2) 供養具① 飲食供養具鉄鉢1口。-502-

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