れて制作され,さらに遅れて③が制作されたと解するのが穏当であろう。次に(2)と(3)の華蔓と幡頭に関しては,かつてその見通しを述べたことがある(拙稿『中尊寺金色堂須弥壇の現状と明治の模写図』)。(2)の華覧は現在六枚がのこっている。いずれも透彫りで表した宝相華唐草の地文にむかいあう迦陵頻伽を配したもので,作風・制作技法の上から三種に分けられる。すなわち,① 透彫りした宝相華唐草に薄肉彫りをほどこし,別製の銅板打ち出し製の迦陵頻伽をはりつけたもの(3面)② 宝相華唐草,迦陵頻伽を一枚の銅板より透彫りにしたもの(2面)③ 図様,技法ともに②のものに準ずるが,作域がいちじるしくおとるもの(1面)である。一方,(3)の幡頭の方は三枚がのこっており,こちらも作風・制作技法にそれぞれちがいがみとめられる。すなわち,① 幡頭と幡身の全面に宝相華唐草を薄肉に透彫りし,幡身の坪の中心に別製の銅板打ち出しの天人をはったもの② 幡頭に宝珠と宝相華文とをすかし,表面を薄肉彫りにしたもの③ 図様,技法ともに②に準ずるが,作域にいちじるしくおとるものである。このように,同じ堂内での所用の伝えを持つ荘厳具が三組ずつに分けられることは,その荘厳の具という性格からみて,なんらかの供養なり法会なりが三度いとなまれ,これらはそれにともなって調製されたことを示したものであろう。は上下の桓間に束を立て,各面を二間に区画する。各区画内には格狭間をもうけ,鏡板に銅製打ち出しの孔雀を鋲止めする。上下柩に螺細を施した際の大体彫りの痕跡があるが,現在螺細はまった<遺存せず,沃懸地も一部にわずかに認められるに過ぎない。上下桓の要所に八双金具を打っている。八双金具には中央金具と隅金具の2種があるが,いずれも端を出八双形(複合稜形)につくり,縁取りの内側には魚々子地に6弁俯職形花形,6弁側面形花形,葉形や若芽形の組み合わせからなる宝相華唐草文を薄肉彫りで表している。この八双金具の文様表現には,(2)(3)の華嬰や幡頭のそれぞれ①類のものの文様表現にきわめて近い造形感覚が認められる。(5)の螺細平塵案には3基がある。3基とも丈が低い鷺脚形式の案で,天板の下に欄(4)の螺細礼盤は黒漆塗りのいわゆる箱形礼盤で,上面に方形の天板を張り,四側面-505-
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