⑤ 五重塔西面・塑造金棺浮彫。身部正面に左右対称構成をなす波状唐草。房は山側⑥ 他に同じ頃,海獣葡萄鏡や瓦当文様に使用された(7C末〜8C初)。ともに葡萄① 展開1:葉に包まれる房薬師寺金堂・薬師三雌像台座上桓浮彫。波状唐草の谷② 継承(1)の特徴は奈良時代に入っても継承されている。織物遺例として,正倉院・平17年=745)が波状唐草を背中合わせとした面状構成である。ここではまた別に④ 展開3:宝相華からの展開奈良時代盛期の新しい展開と考えられる。葡萄の房の房や葉,栓形をつける。葉には葉脈を表すか房の粒は省略する(8C末)。や谷側の茎の先端につく。谷側では先端か二つに分かれ房と花形(石櫂モチーフが変容したものと呼ばれる)をつける。葉はパルメットでもなく自然葉でもなく,C字形渦巻きである(和銅4年(711)頃)。唐草だけに注目すれば,きれいな波状唐草で山側に房を谷側に自然葉をつけるか,あるいは山・谷側ともに房をつけている。この時期の特徴は,③のみが面状構成をとっているが,他は葉がパルメット・自然葉.C字形と様々であるけれども全てはっきりとした波状唐草である。(2) 8世紀前半以後の展開と継承および変容側に房を山側に自然葉をつける。この形式は(1)と変わらないが,房の表現が今までと違って新しい。すなわち房はさらに大きい自然葉に抱かれている(8C前半)。これと同様な葡萄の表現は,唐草ではないが,正倉院・曝布半腎にみられる。そこでは獅子がその房をつけた葡萄の一枝を手で支え口にくわえている。最勝王経帳(天平14年=742)がある。③ 展開2:面状構成同じモチーフを輪繋ぎ文様にした正倉院・白綾の几褥は(1)を面状構成に展開したものといえる。請来品と考えられている東大寺・葡萄唐草文染革には表面と底面に葡萄唐草文がある。表面は波状唐草を交互に配置し,底面は四出させ,やはり面状構成である。金工では東大寺金堂鎮壇具・金釧荘太刀(天花喰い鳥のように,鳥か葡萄の房をくわえて飛んでいる。状のものは葡萄唐草の展開ではなく,また別な文様展開の影籾を受けて出現してくる。それはいわゆる宝相華文(花唐草)と呼ばれるものの一種として成立したと考えられる。なぜそう考えられるのか以下にその理由を述べよう。東大寺に,三月堂・不空覇索観音立像の持物と伝承されてきた宝相華が伝来している(『奈良六大寺大観』+巻挿図15)。完形ではないが一本の宝相華で英-84 -
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