頁92場面(44頁X2場面十4場面)からなるものの二種が知られる。冒頭にはヤコブぼ完全に近いものだけを数えると60数部の存在が確認されている(注6)。既述のように,図像は1頁につき2コマ,つまり2場面が基本構成で,1頁全部を1図に充てている箇所が4頁ある。I ■VIまでの6種の異版に分類されているが(注7)'頁立ての上では,25葉50頁96場面(46頁X2場面十4場面)で構成されるものと,24葉48ス・デ・ヴォラギネの『黄金伝説』の聖ヨハネ伝による8場面(92場面の場合は4場面),次にウルガータ聖書による黙示録24場面,『反キリスト』からの4場面,再びウルガータ聖書による55場面,『黄金伝説』による5場面である。テキストにはいくつかの文献が複合的に使われている。主要なものは,ウルガータ聖書の「ヨハネによる黙示録」の記述と『黄金伝説』による聖ヨハネ伝,またベレンガルドゥスが11/12世紀頃に著した黙示録註解であり,ほかにも,今日では出典を突き止められない註解が含まれているものもある。文字は図中の余白部分に図像とともに彫り込まれており,文字に充てられた空間はきわめて限られている。『黙示録』の現存60数部のうちドイツ語による1部(注8)を除いてすべて,ラテン語が使われている。木版本『黙示録』は次のような方法で製本されている。図像が刷られた面を内側にして折った紙葉と,その逆に,刷られた面を外側にして折った紙葉を交互に重ね合わせている。そのため,図像があるページと,白紙の頁が交互に現れることは既に述べた。一折りが8葉で成り立っている折丁ならば全部で32頁あるが,図像が刷られているのはその半分の16頁である。一つの折丁の一番外側には何も刷られてない面が来る。綴じたときに各図が正しい順番で並ぶためには,第1葉には最初の図(第1図)を左頁に,最後の図(第16図)を右頁に刷る。第2葉には第2図を右頁に,第15図を左頁に刷り,刷られた面を外側にして第1葉に重ねるわけである。このように片面刷りの場合は,通常の書籍の二倍の用紙を必要とする。西ヨーロッパにおける紙の生産は,1400年中頃には既に供給体制が確立していたとみるのが一般的である。だがそれまで長年にわたって使用されてきた,いわゆる「羊皮紙」と紙とが,価格や供給量の面でどのような関係にあったかは微妙な問題であろう(注9)。当然ながら14世紀後半以降,製紙術が広まるに従って,紙の供給量は飛躍的に増大し価格は下がっていった。しかし一方では,羊皮紙もなお使われ続けていたことは明らかで,製紙の初期段階では紙のほうが高価で稀少だったには違いない。活字本では紙-91 -
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