鹿島美術研究 年報第15号別冊(1998)
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(1303)尊勝院に施入されたことが外箱蓋裏の墨書から明らかになる。2-1 清涼大師像(華厳宗第四祖)伝来:東大寺,制作年代:室町中期頃2-2 圭峯大師像(華厳宗第五祖)伝来:東大寺,制作年代:室町中期頃2-3 至相大師像(華厳宗第二祖)2-1, 2-2に比べ,規格がいくぶん小さく,画風も大きく異なる。像主は,椅子ではる画像について伝来と画風を述べる。各作品に付けた番号の親番号が同じ場合は,現在一具として伝来している事をあらわす。本画像は「頂相形式」ではないが,下記2から3までの頂相形式の華厳祖師像が存在することから,関連する作品として挙げた。ただし,おそらく腺勝院に伝来したことから凝然の祖師観とこの画像が関わりを持つかどうかは明らかにしがたい。金の大定二十五年(1185)の年紀を持つ原本の鎌倉中期頃の写しと考えられ,乾元二年椅子に座し,台に置かれた沓がその前に描かれる。いわゆる「頂相形式」で描かれる。像主は左手に巻子を持ち,右手は第一指と第ニ・三指を捻じ,法被を掛けた椅子に向かって右を向いて座す。像主は,両手で払子を取り,法被を掛けた椅子に2-1の清涼大師とちょうど向かい合いに,向かって左を向いて座す。2-1,2-2は形式,画風をほぼーにする。顔を理想化して表現する泉涌寺本南山・大智像などの宋画とは別の感覚に基づく造形であることが推測される。伝来:東大寺,制作年代:久米田寺の伝清涼大師像との比較から南北朝頃かなく,1の香象大師と同様に礼盤に座しているが,座した像主を斜めから描くと言う点,足下に靴が一足置かれる点は「頂相形式」に準ずる。平田氏は,2-1と2-2と「とうてい同期の作とは考えがたい」(注12)としている。又平田氏は大阪久米田寺の「清涼大師像」について,2-3の至相大師像と「祖型を同じくすることは明かであるが」名称を異にする点に疑問を持たれている(注13)。1 香象大師像(華厳宗第三祖)施入:専勝院,制作年代:鎌倉中期頃-111-

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