6-2 大智律師像伝来:戒壇院,制作年代:室町前期を下限とする7-1 円照像伝来:戒壇院,制作年代:鎌倉末期7-2凝然像伝来:戒壇院,制作年代:鎌倉末期6-1 南山律師像伝来:戒壇院,制作年代:室町前期を下限とする伝来:戒壇院,制作年代:鎌倉末期この画像は,正面向きであり,斜めを向いた像主を描く頂相形式ではないが,戒壇院における鑑真和上の重要性からこの画像を考察の対象に入れた。画面上方に,応安5年(1372)の年紀を有する天境霊致の賛か別絹で貼り合わされている。東大寺における鑑真への篤い信仰を反映する画像である。[宋代仏教の四部律]泉涌寺本を祖型とするが,顔に跛などを加え若干老相に描かれている点が異なる。像主は払子を両手で持ち,法被を掛けた椅子に向かって左向きに座す。いわゆる頂相形式で描かれる。6-2の大智律師像とはちょうど向かい合いになる。頂相形式ではなく,樹下で鉢と錫杖を手にする姿で表される。同様な大智律師像は南都では西大寺にも伝来する。この図像は,大智律師伝にみる布衣持鉢し市中を乞食したという話(注17)を基にしていると考えられている(注18)。又,アメリカ・クリーブランド美術館本の大智律師像(宋時代)も,錫杖と鉢を手にした立像である。大智律師に関しては泉涌寺本のような頂相形式とは別の図像が存在していたと考えられる。又,西大寺にも同様な図像の大智律師像(鎌倉時代)が伝来する。なぜこのような図像が敢えて選択されたのかという点に関する筆者の見解は後述する。[同時代日本人僧像]一具として伝来するが,本来は別個のもの(注19)。両者とも法被を掛けた椅子に座し,向かって右を向く像主が斜めから描かれ,画面上辺の色紙型に像主の行状が記されている。それぞれ,像主の没後まもない頃の制作と考えられるので,画像の制作期と像主の生存時期が隔たらない,つまりほぼ同時代の祖師を描いたという観点から[同時代日本人僧像]として分類した。凝然像の右手に筆,左手に巻子を持つポーズが泉涌寺本の大智律師像と重なる点と,大智律師への凝然の教理的な受容態度から,-114-
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