政度造営の際には労せず障壁画揮奄に携わっている。『平安人物志』はそのような過程を実によく映し出す鏡と言えるのである。また文人画と浮世絵というのは,絵画理念上は相反する方向性をもった絵画だが,『平安人物志』での扱いは近いものがある。つまり円山四条派らとは別枠で論じるか,もしくは全く触れていない。その編集方針に「御用」を至上とする価値観が反映していると見ることができるのである。『平安人物志』の持ついくつかの偏りを指摘したが,それでもなお江戸後期の京都画壇を知る上で最も基準とすべき書であることには違いはない。その偏りをよく理解した上で,今後も当時の画家の位置付け等に活用されるべきものであると,再認識する事ができた。(注)田島達也「『平安人物志』に登場する画家一覧」『朱雀』(京都文化博物館研究紀要)第9集,p.29■44を参照。-172-
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