ーマである第21王朝治下に再埋葬された王家の亜麻布を含む貴重な作品を最も多く所蔵している。本年度の調査では,同館所蔵の亜麻布のリストと亜麻布の保存状態を把握するための基礎資料の作成が行われた。同館には絵入りの葬祭用亜麻布のリストはなく,調査期間中に可能な限り蔵品カード・目録に目を通して,リスト作成の作業を進め,その内の数点を保管庫で確認して,写真撮影と現状調査を実施することが出来た。以下に調査対象を出土地ごとに,形状と用途の両面から分類して,年代順に列挙する。(1) 一般人の葬祭用角型亜麻布3点。デール・エル・メディーネ出土。第18■20王朝。供物台の前に座す故人あるいは故人への供養儀式場面を描いた小型の角型亜麻布で,ミイラを納めた人型棺の上,あるいは布で包まれたミイラの胸部個所に安置した亜麻布。ブルュイエール(B.Bruyere)の1934■35年の発掘で出土した「パシェドの角型亜麻布」(注1)'同じくブルュイエールの1928年の発掘で出土した「センネフェルの角型亜麻布」(注2)'アンテス(R.Anthes)の1911年と1913年の発掘で出土した「スウル(?)とネジェメ(卜)の角型亜麻布」(注3)の3点を確認した。保存状態は良好である。(アメンヘテプ2世墓)出土。第19■21王朝。厨子(もしくは神殿)をかたどった角型亜麻布で,王のミイラにつけられていた。ロレ(V.Loret)の1898年に実施した発掘で出土。「シプタハの角型亜麻布」(注4)と「ラムセス6世の角型亜麻布」(注5)の2点が保管されている。布の重要部分が失われ,残存部分の保存状態もきわめて悪い。(隠し場)」出土。第20■21王朝。アメン神座像を描く角型亜麻布(注6)で,第21王朝下に再埋非されたラムセス3世のミイラに着けられていた。マスペロ(G.Maspero)の1881年の調査で出土。小穴は複数あるが,保存状態は,ほぼ良好といえる。場)」出土。第20■21王朝。(3) 王の葬祭用角型亜麻布1点。デール・エル・バハリの「王家のカシェット(4) 王の細帯状亜麻布3点。デール・エル・バハリの「王家のカシェット(隠し(2) 王の葬祭用角型亜麻布断片2点。王家の谷の「王家のカシェット(隠し場)」-216-
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