鹿島美術研究 年報第15号別冊(1998)
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(E. Grebaut)とが1891年に行った発掘調査にて出土。亜麻布の大半は良好な保存状(5) 王およびテーベの神官王一族の長方形状大型亜麻布8点。デール・エル・バ(5)のテーベの神官王一族の亜麻布と同一の造りで,大半のものにオシリス神の横向葬祭文と多数の神像画とを施した細帯(注7)で,ラムセス3世のミイラに着けられていた。(3)と同様にマスペロの1881年の調査で出土。極少の小穴は数多いが,保存状態は良好と言える。ハリの「王家のカシェット(隠し場)」出土。第19■21王朝。シャンティ腰布をまとった男性立像を描いた無銘の亜麻布(注8)は,第21王朝治下に再埋葬されたラムセス2世の遺体を包んでいたと思われる。この亜麻布以外の全ての亜麻布は,神官王一族のピネジェム1世(注9),マサハルタ(注10)'タイウヘリト(注11)〔図1ぶピネジェム2世(注12),ヘヌトタウイ妃(注13),ネジェメト妃(注14),ネシコンス妃(注15)のもので,布には葬祭神オシリスの横向きの伝統的立像が,死者の名と共に図示されていて,前述のように,後代に死者の肖像画へと発展する端緒をなす。(3)(4)と同様にマスペロの1881年の調査で出土。シャンティ腰布姿の男性図像の亜麻布は,他のものと繊維と織の質が異なり,薄手で脆弱である。大小の穴が多数開いていて保存状態はきわめて悪い。出来るだけ早い時期に保存の為の処置を施す必要がある。ピネジェム2世の亜麻布を除いた神官王一族の亜麻布の保存状態は良好である。ピネジェム2世の亜麻布のオシリス神画像は,多色で描かれているが,使われた顔料には褪色が見られ画像は鮮明ではない。オシリス神像の顔部は大きな穴により欠損している。(6) アメン神官の長方形状大型亜麻布24点(注16)。デール・エル・バハリ(バブ・エル=ガスス)の「第2のカシェット(隠し場)」(アメン神官達のカシェット)出土。第21王朝。きの伝統的立像が図示されている〔図2〕。しかし神官もしくは女神官がオシリス神前で儀式を挙行している場面が描かれている作例〔図3〕や神への祈願を記す銘文のみが記されている作例の亜麻布も含まれている。ダレシー(G.Daressy)とグレボ態にある。しかし24枚の亜麻布は,各々背面に木綿の布地を張った高さ175センチ巾80センチを計るガラス張りの木製の古い額縁の中に納められており,長年月の間に額の背面の木綿布の織り目の間から埃の微粒子が侵入して亜麻布の全面に付着し織り目の中に侵入して,亜麻布全体が黒ずんだ外観を呈し銘文・画像を部分的におおいかく-217-

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