3.アンクエフエンコンスの葬祭用亜麻布のクリーニングvation)のソマイヤ・アブデル・ハレク・イブラヒム(SomayaAbdel Khalek Ibra-him)氏の協力を得てクリーニングを実施したので,以下に報告する。すに到っているものもある。研究調査を進める上で埃を除去しなければならない(次項のアンクエフエンコンスの葬祭用亜麻布のクリーニング参照)。神々を礼拝するプサメティクの図像および祈願文を施した細帯状亜麻布(注18)。保存状態はきわめて良好。ギリシア・ローマ時代。数段に重なる葬祭場面の頂部から笏を持ったオシリス神の頭部のみを図示するまれな構図の亜麻布断片(注19)は,恐らくオシリス神をかたどった人型棺を描いたらしい。大小様々な穴が数多く,保存状態は悪い。他の2点(注20)は中央に正面を向いたオシリス神立像を配置する頻繁に使われた構図の亜麻布である〔図4〕。保存状態はかなり良好。不明。ローマ時代。いわゆる「ファイユームの肖像画」と同様の技法による「テンペラ画」を施した亜麻布である。かつては肖像の身体の各部分がミイラの身体の部分に合致するような状態で遺体をおおっていた。良好な保存状態。埃の付着の著しいデール・エル・バハリの「第2のカシェット(隠し場)」出土のアンクエフエンコンスの亜麻布(注22)のクリーニングの許可願いを博物館当局に申請したところ,同意を得た。そこで筆者は,同館の繊維製品保存部(TextileConser-額縁をはずし,額の背面に張られていた木綿布にピンで固定されていた亜麻布は,高さ154センチ,巾71.5センチを計る〔図6• 7〕。約5センチの房飾りが下端を飾る。布の4隅と上下の中間位置の左右との計6本の細紐が布から織り出されている。布をミイラにとりつける際に使用した紐である。布の繊維は弾力性に富み,良好な状態を保っていた。アンクエフエンコンスの葬祭用亜麻布には,他の大半の作例のようなオシリス神画(8) オシリス神正面像を描いた一般人の長方形状大型亜麻布3点。出土地不明。(9) 死者の女性の肖像を描いた長方形状大型亜麻布1点(注21)〔図5〕。出土地(7) 一般人の細帯状亜麻布1点。出土地不明。末期王朝時代(第26王朝)。-218-
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