2.青銅飾板における動物意匠の起源いが,しばしば非常に巧妙に肉付けされている。第二に,動物の特徴的な部分や,特徴的な姿態を強調することである。たとえば虎の場合は,歯の部分と爪の部分を,鹿と羊の場合は,角の部分をつねに誇大に表現している。捻体形動物意匠は,その動物の瞬間的動作を誇張して表現しているのであろう。第三に,平衡・対称というデザインの方法をつねに使用することである。第四に,最小の空間内に最大の内容を盛り込もうとすることである。第五に,強烈な運動感とリズム感で飛馬と動物闘争場面を意匠化することである。このような特徴を持っている青銅飾板の動物意匠は,動物そのものがほとんど静止形であり,平面的であるにもかかわらず,意外に質量感と躍動感にあふれており,見るものにかなり強烈な印象を与える。これにより,中国北方青銅文化における青銅飾板の動物意匠が,芸術的に相当高く評価されたわけである。ユーラシア北方ステップ地帯における動物意匠は,中国北方長城地帯,モンゴルと外バカイル,ミヌシンスク盆地,アルタイ,カザフスタン,黒海沿岸の六つの地域に分布していると考えられる。紀元前2000年から紀元前1000年にいたって,自然環境,経済形態と生活風習などが相似した諸多の遊牧民と半農半牧民は,その広大な地域に居住していた。それらの遺物(武器,馬具と装身具)も,多量の近似した文化要素を表している。そのうえ,平和的交換,貿易,移動は勿論,戦争,征服,強奪によっても,互いに影響するのを免れることはできなかったであろう。が,各民族において,それぞれの文化が発生と発展した歴史を無視して,ただ,幾つかの相似した文化要素,特に動物意匠の相似性から,いわゆるスキタイ文化,または動物意匠の源郷が一つの中心地しかないという結論にいたるというのは,納得し難い。オルドスとその周辺は,ユーラシア北方ステップ地帯の草原文化と中国の中原地域の発達させた農耕文化を交錯した地帯に所在し,その上,いまから3500-2500年前の期間に,この地域が直接に気候変化に影響され,生態環境が激しく変化し,牧畜業が農業経済から分離され,最初の遊牧文化が誕生したのである。いわゆる北方式青銅器はその遊牧文化の代表である。自然環境と現実の生活のために,オルドスとその周辺における青銅器文化の担い手は武器,生活用具と装身具などをもって,長城沿線の地域に足跡をのこしたのである。オルドスとその周辺における青銅器文化の発生と発展を見れば,オルドスとその-260-
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