周辺も動物意匠の源郷の一つであると考えられる。オルドス青銅飾板の動物意匠はオルドス青銅器文化における動物意匠の一部分であり，その起源問題もオルドス青銅器文化における動物意匠の起源と関連している。とはいえ，青銅飾板，またその動物意匠が，オルドス青銅器文化における動物意匠の発生，発展，消滅という脈絡と，完全に相符合していない現象にも，注目しなければならないと思われる。青銅飾板の分類と時代区分によって分かるように，A,B, C, D, E, F各型の間には，直接の伝承関係がないわけであり，各型は各自の淵源があって，また一つの類型の中でも，各様式によって相違点があると思われる。A型，B型およびC型の時代区分と型式の系譜がはっきりしており，それらの起源問題は比較的解釈し易い。いままでに，夏家店上層文化の南山根遺跡と小黒石溝石梓で出土したBI式，AI式とAN式の飾板は，もっとも早い時期のものであると認められている。夏家店上層文化は，農耕文化から遊牧文化へ転化しているのであるが，環境考古学の資料によって，その転化した原因は，外来文化の影響ではなく，気候の変化にしたがって，生活様式が転化したのだということがわかる。その後に，戦国早期の鉄匠溝1号墓からまだAI式とAN式の飾板が出土している。特にAN式の動物交尾文飾板は，紅山文化以来の生殖崇拝の風習を継承しているもので，同時に東胡文化の特徴であるともいえよう。であるから，BI式，AI式，AN式青銅飾板の動物意匠において，それらの源郷は，内モンゴル東南部，すなわち東胡文化が分布した地域であることがわかる。オルドスでは，春秋晩期の桃紅巴拉遺跡でBI式とAI式の飾板が出現してから，戦国早期に中国北方青銅文化において，代表的動物意匠，すなわちAll式の動物闘争文飾板が登場したのである。この種の動物意匠が形成された時は，長城地帯が遊牧化された時期と完全に一致している。出土した資料によって，この時期に，中国北方長城地帯は，自然環境の変化にしたがって，土着の農耕文化から遊牧性のある青銅器文化に転化し始めたところであり，この時点では，外来文化（先スキタイ文化など）の影響はまったくなかったのである。All式の飾板は，オルドスとその周辺の全地域に分布しており，次第に原始的動物意匠から写実的動物意匠に発展し，戦国晩期にスキタイ文化の影響を受け，そのスタイルがD型飾板と非常に近似していた。また，春秋時期から，AIII式，AN式B型の飾板の動物意匠はますます成熟し，伝統的丸彫動物-261-
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