ぎよせ,内剖りをほどこす。体幹部は前後二材に五•五センチ程の間材をはさむ。内3 伝観音菩薩像〔図3〕4 釈迦如来像〔図4〕剖りには幅ー・五センチ程の反りの浅い丸竪を用い,体幹部前材中央に像心束を,腰のあたりに前後材をつなぐ束を彫り残す。右体側部縦一材。左体側部は前後に縦二材を矧ぎよせていて,後部材矧目に「地蔵命」の墨書が確認される。膝前は前後に横二材を矧ぎよせ,内剖りには丸刀をもちいる。右前膊,裳先別材。左前膊,両手首先欠失。各部材の緊結には角柱状の雇柄をもちいる。体幹部後材には前後の束のすぐ上に,構造上は不要な蟻柄用の柄穴が切られている。全体の木寄せに不規則な点がみられることとあわせ,転用材の可能性が考えられる。像高95.1センチ檜材。寄木造り。差首。頭部は両耳の前後で前後に三材を矧ぎよせ,内剖りをはどこす。面部材のみ内面から焼き,炭化させている。後頭部材は一部上下に割り矧ぐ。体幹部は前後二材に七センチ程度の間材をはさむ。体幹部前面材は像心束を彫りのこし,背面材とは前後束でつなぐ。体内は丁寧に内剖りをほどこし,幅五ミリ程の丸刀でさらい,矧ぎ目には麻布(後補力)を貼り,全体に黒漆を薄く塗って仕上げる。膝前は前部一材,後部上下二材の三材から彫りだす。左前膊半ばから袖口まで一材。髯,左袖間材,右前膊半ばから袖口まで後補。像高32.3センチ檜材。寄木造り。差首。頭部前後二材。体幹部前後二材(後部材後補)。体側部左右各一材。髯別材。内剖りを丁寧にはどこす。体幹部前面材は像心束を彫りのこす。これら高城寺の諸仏は,基本的な木寄せを同じくし,体幹部材に像心束,前後束を彫りのこす構造や丸刀を用いてやや神経質に内剖りをおこなうことが共通している。このような構造・技法の特徴については,中世の院派仏師の仏像に多くみられることが指摘されている(注2)。とくに,3伝観音菩薩像と4釈迦如米像については,両足先をめぐり,つよく屈曲して下に流れる衣文や髪際の鋭角にたわんだ地髪のふくらみなど,院派特有の表現がみられ,洗練された作風から一四世紀なかばころの院派仏師の作品とみて間違いない。1釈迦如来像と2地蔵菩薩像は,3伝観音菩薩像や4釈迦如来像とは作風が少しことなるが,構造・技法の特徴から,ほぼ同時期の院派仏師-20 -
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