して提出したい。本間莞彩「アイヌ連作」の背景本間莞彩（本名・浅田籐松）は，明治27(1894)年新潟生まれで，明治41年14歳の時に北海道余市町に移った。その後大正3(1914)年に上京，太平洋画研究所で学び，大正9年に帰道。大正14年の北海道美術協会（道展）創立以後は同会で活動し，昭和2(1927)年より日本画に転向，写実を基盤とする洋画的表現で注目された。本州で学んだ少数の指導者に頼りつつ，基礎的技術の習得に留まる傾向であった北海道の日本画壇にあって，独自の表現を模索する行き方には期待が寄せられた。その莞彩にとっては，技術的側面以上に，何を描くかといった精神的側面が課題となっていったようだが，昭和10年代半ばからアイヌ風俗を主題に連作を始めている。出品歴・制作年の明らかなものを次に挙げるが，それ以外にも昭和10年代の制作と思われる作品が数点あり，集中的にこの主題に取り組んでいる。昭和15年第16回道展「糸よるメノコ」昭和16年第17回道展「北夷宝器」／第1回九潮会展「メノコ」「捧る」昭和17年第18回道展「儀式の後」昭和18年第19回道展「メノコ習作」／第4回新興美術院展「北夷宝器」昭和19年第20回道展「アッシ時代」／第5回新興美術院展「メノコ」昭和20年第6回新興美術院展「コタンのメノコ」（佳作）昭和21年第1回道日本画協会展「めのこ」北海道画壇にみるアイヌ風俗画の制作状況は，道内画壇の中心的団体であった道展の出品目録の画題によれば，大正14年から昭和20年までは以下の通りで（莞彩を除く），毎回100点から200点前後の入選数からみれば，その作品数はごく少数である。大正15年第2回道展「アイヌ小屋」（水彩）繁野三郎昭和6年第7回道展「土人遊戯」（日本画）西條正鳳昭和8年第9回道展「アイヌ少年」（油彩）田辺謙輔昭和10年第11回道展「古渾の秋」「土人タブカラ之図」（日本画）北山晃文昭和13年第14回道展「アイヌ古老像」（油彩）藤田晃一昭和15年第16回道展「メノコ」（油彩）滝口新平昭和16年第17回道展「アイヌの男」（彫刻）竹下慶一-481 -
元のページ ../index.html#491