鹿島美術研究 年報第15号別冊(1998)
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第13回独立展「踊るアイヌ」(油彩)江口美春(道在住)むしろ,同時期の北海道在住者・出身者が中央の美術展へ出品した作品数の方が上回っている。以下が(莞彩の新興美術院展出品作を除く)該当作品である。昭和4年第10回帝展「アイヌ熊祭」(日本画)平子聖龍昭和12年第24回二科展「アイヌ」(油彩)田辺三重松(道在住)昭和13年第8回独立展「蝦夷地」(油彩)菊地精二(道在住)昭和14年第11回第一美術展「メノコ」(油彩)滝口新平(道在住)昭和15年第8回東光会展「踊るアイヌ」(油彩)大瀧斗良樹(道在住)昭和16年現代大家洋画展覧会「アイヌ」(油彩)上野山清貢昭和18年第6回新文展「アイヌ部落」(日本画)平子聖龍中央の美術展における北海道関係者の出品数を考慮すれば,昭和10年代にみる制作状況は少なからず注目される。また,当時の地方新聞において,北海道関係者の中央美術展入選は随時報じられたが,主題がアイヌ風俗である場合,特に北海道色の濃いものとして大きく扱われたことにも注意したい。昭和前期は北海道美術がそれまでにない飛躍をみせた時期である。道展創立によって,確固たる北海道画壇が形成されるとともに,道産子第一世代の画家達が中央画壇へ進出し始めた。そしてこの時期,北海道が圧倒的な後発の地であり,北辺にあるという,歴史的・地理的ハンディを,性急な中央追随と風土性の表出という両極の方法で克服しようとする傾向がみられるのである。そうしたなか,中央において北海道のイメージを象徴的に表す主題として,アイヌ風俗が注目されたと思われる。広大な北海道における複雑多様な自然と比較すれば,アイヌ風俗は,独自の文化が放つエキゾ第4回新制作派協会展「荒野(アイヌ民族への長惜碑)」(彫刻)第1回新文展「盲目の老酋長」(油彩)上野山清貢第16回春陽会展「アイヌの娼」「老アイヌ」(油彩)佐藤昌邑(道在住)第3回新文展「ペリカメノコ」(油彩)西村計雄第4回新文展「石狩川」(油彩)西村計雄第13回独立展「アイヌの娘」(油彩)菊池精二(道在住)山内壮夫(道在住)紀元二千六百年奉祝美術展「祈るアイヌ」(油彩)大瀧斗良樹(道在住)紀元二千六百年奉祝美術展「酋長とその家族(アイヌ族)」(彫刻)中野五一-482-

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