る。本稿では,シャルトルとブールジュという,ほぼ同時期の制作年を持つ二例を取り上げ,主として上に挙げた第三義,第四義を中心に論じたい。ョセフの生涯を表した造形作品は多く,ステンド・グラスに先立つ作例はかなりの数に上るが,13世紀以前の作例は幾つかの例外的作品をのぞいて,旧約聖書のエピソードの一つを表すものとして表現されているにすぎない。ステンド・グラス以前に多数の区画からなる連続場面形式でヨセフの生涯の物語を表す例としては,6世紀の「マキシミアヌス司教座」,11世紀の「サンスの象牙彫り小箱」,13世紀の「ナポリの説教壇」が挙げられる。紙面の関係上これらの作品の分析は控えるが,どれも司教が使用する教会調度であり,ョセフが司教の範示として考えられていたことのみ指摘しておく。こうした先行作例とシャルトル,ブールジュの窓との間には明確な類似は指摘されていない。これらの作品が範となった可能性よりも,窓では独自の表現が獲得されていった可能性の方がより高いだろう。場面数をとっても特にシャルトルは27区画と与えられたコマ数が圧倒的に多く(「マキシミアヌス司教座」は14),ステンド・グラスに表される他の主題(聖者伝,新約物語)同様,新たに窓という縦長空間に適した表現が作り出されたと言っていいだろう。多数のコマを埋めるために,聖者伝は似たような場面の反復が多く,また,新約聖書からの物語では,数多くの逸話的場面が付加され,より物語としてのストーリー展開に起伏が与えられている。北側廊のベイ41(『コルプス』による)に位置する。幾何学構図は以下の通り。中央列には正方形が45度傾けられ菱形状となり,内部は対角線上に4分割され,その各辺を半径とする半円が四隅を囲む。合計8コンパートメントからなるこのユニットが四つ積み重ねられている。ただし最上層はランセット窓の曲線で遮られるため,6コンパートメントとなる。最下段の2つの半円形コンパートメントは,両替商。また,最上部は二本のろうそくの間に座し,祝福を与えるキリスト。従って,ヨセフの物語には27の区画が与えられ(それぞれの場面については,図1参照),「創肌記」第37章から第46章までが描かれている。鉄桟は各段の切れ目に水平に入れられているはか,中央列の菱形列の外枠及び,内1 シャルトル大聖堂-490-
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