⑫ 「満洲美術」について1 =満洲国内に在住し,制作活動を行った画家およびかれらが組織した美術団体の確2 =前項の満洲在住画家・団体の活動内容の確認。3 =満洲を一時的に訪れて,制作した日本人画家の確認。5=「在満画家」および「渡満画家」の作品の所在調査。研究者:山梨県立文学館学芸員飯野正仁本調査の目的は,旧「満洲国」における美術活動について考察するための基礎的な歴史的事項の確認にある。満洲国は,周知の如く,1932年(昭和7)に日本が軍事力を用いて,中国の東北3省および東部内蒙古(熱河省)を支配地域として作り上げた愧儡国家である。1934年(昭和9)'清の最後の皇帝・漕儀が満洲国皇帝に即位,首都を新京(現在の長春)に置いた。1945年(昭和20),日本の敗戦とともに消滅した。現在,中国においては「偽満洲国」と称されている。「五族共和」「王道楽土」をスローガンとしたが,実質的には日本による植民地支配といってよいであろう。多くの日本人が満洲に移住し,そこには独特の「満洲文化」ともいうべきものが育ち始めていた。満洲における「文学」活動については,最近になって急速に日中両国において共同研究が進展し,その全貌が明らかとなりつつある。しかしながら,満洲における「美術」活動ー小論ではこれを以降「満洲美術」と呼ぶ(注1)ーについては,その実態は現在のところ,明らかではない。本調査は,まず基礎的な確認すべき事項として次の5点を調査項目とした。認。各種画集・展覧会図録,『日本美術年鑑』・『満洲年鑑』・『満洲国現勢』等の年鑑類,各種新聞,『美術』・『塔影』・『みづゑ』等の各種美術雑誌を参照し,満洲における美術活動に関する事項を整理し,<「満洲美術」年表〉(「鹿島美術財団」注)を編年体で作成した。前記3• 4項に関する,いわゆる「渡満画家」については,<「満洲美術」画家索引〉を作成した。<「満洲美術」年表〉とともに用いることにより,誰がいっ,何のために満洲に赴いたのか,その概略を知ることが出来るものと考える。同様に,第5項の「満洲」に関わる美術作品の所在については,<「満洲美術」現存4 =前項のいわゆる「渡満画家」の渡満の時期,動機およびその活動内容の確認。-498-
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