⑭ 西面北側右側より左方向へと枝を延ばす樹木の下で,羅漢は岩上に坐具を⑮ 同南側羅漢は,岩の上で,両手で右足をかかえて坐して右下方を見下ろ⑯ 南面西側細い幹の木々を背に,羅漢が合掌して下方を見下ろす。その左脇以上十六図の配置を示したものが後出の図である(以降,壁画羅漢像の各図は上記の番号で表す)。ところで,十六図を通して気づくことは,画面が横に幅広いにもかかわらず,図様が画面の左右一方にかたよって描かれていることである。それゆえいずれの羅漢像も,一方の側に広い余白を残している。通常,こうした余白部分には色紙形を設けるものと思われることから,あるいは④の右上隅にみえる白色のおおまかな線力\色紙形を示した下当たりとも思われるが,現状の画面上に色面の痕跡は見あたらない。ともあれ,このようにかたよった図様にする構成は,作者の意図によることがうかがわれる。すなわち,壁画羅漢像の図様は,南側の八面において上段一右寄・下段一左寄に表わし,対する北側の八面において上段一左寄・下段一右寄に表わしており,東西を軸に南北が左右対称をなすように図様を配している(図中の記した数字の位置がこれを示す)。ただし実際には,この構図がかえって絵画としての不自然さを生んでいることも否めない。特に⑬では画面の右寄りに位置するにもかかわらず,真横を向いた羅漢が右上方を見上げる構図であることから,左側の広々とした余白とは対称的に,この羅漢像は狭苦しい印象を与えている。か)が笠を持つ。また羅漢の背後の岩からは雲が湧出する。画面右下では,飾り台上に据えた獅子形の香炉より,燻煙がたち昇る。広げた上にくつろいで坐り,上方を見上げて口を開ける。樹上より三匹の猿が鎖状になって下がり,羅漢の背後の幹にも,一匹の猿が花(緑色の葉がみえる)をさし出す。左下方では,花を盛った器を持つ俗形が見上げる。し,その先には俗形二体が認められる。羅漢の右脇には,柵を隔てて二本の芭蕉が長い葉をしなわせている。には,若い僧が両手を前にさし出している。画面右下方には,人物の一部と思われる,細かな毛描きの線描などが見出される。-528-
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