や浮彫り数点,ブロンズ製小型像,テラコッタ小像などであるが,ローマ美術は,大理石製の彫像や肖像,石製あるいは鉛製の棺,壁画断片,ブロンズ製器具,テラコッタ製ランプ,ガラス製品(製作地,主にシリア)が挙げられる。エトルリア美術としては,エトルリア北部で造られた浮彫り装飾付納骨容器数点,トゥスカーニアからのテラコッタ製棺,テラコッタ製奉納用頭部像,ブロンズ製刻線装飾鏡数点,建築装飾用テラコッタ,ブッケロ式陶器などの多様な陶器類が数えられる。イタリア南部の土着の古イタリ文化に由来する作品は,特にプーリア地方の多彩な幾何学装飾陶器の他,ダウニア地方(フォッジャ地域)の,いわゆるシポント式刻線装飾墓標が挙げられるが,後者は日本で知られるのは1点だけである。幾つかの質的に傑出する作品や数多くの中級品と並んで,若干のコレクションでは模(偽)造品も目に止まる。例えば天理大学付属天理参考館では,エトルリア美術工芸品の多くが偽造品と見られるが,中でも金製装身具,象牙製小型像,幾つもの小像で豪華に装飾されたヴィッラノーヴァ式小屋型納骨容器が近代の偽作であることは,一目瞭然である。各コレクションの起源や歴史も多様である。若千のケースでは,その起こりは明治時代までも遡る。例えば橋本関雪はギリシア陶器を,すでに19世紀末にヨーロッパ旅行の途中,パリで収集用に買い求めている。日本が開国し,ヨーロッパから数多くの研究者や芸術家などが来Hするようになるにつれ,当時,古代地中海美術への関心が目覚めたのであろう。しかし,日本にあるコレクションの大部分は,勿論それよりずっと後になって成立したもので,美術品は,主にニューヨーク,ロンドン,またスイスなどで開かれる競売や同地の美術商を通じて買い集められている。そのような品々の中には,例えば川崎市の大隈コレクションにある幾つかの作品などのように,既に今世紀の初めに知られており,公表されているものもあることから,かつてはヨーロッパの古いコレクションに属したことが明らかである。それに対し,東京の古代地中海美術館所蔵の,質的に傑出した紀元前4世紀末のプーリア製赤像式渦巻クラテール〔ボルティモアの画家,図1〕のように,国際的に著名な研究者にさえ知られていない美術品は,ごく最近の盗掘に由来することを示唆している。地中海圏の国々での盗掘,国際的な美術品交易,また幾つかの美術館や収集家達の買付け政策についてここで論じることは,勿論ひかえたい。日本においては,ますます増えていっているギリシアやイタリア南部の陶器を例外とすれば,伝統的には(数々の遠征や発掘活動の結果)特に近東あるいはエジプトからの美術工芸品の方が,ギリシア・ローマのそれよ-573-
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