鹿島美術研究 年報第15号別冊(1998)
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インパスト;近代の模造品;由来不明天理参考館所蔵のエトルリアー古代イタリア考古美術品には,幾つかの“エトルリア”金製装身具や褐色を帯びた粗製インパストで作られた小屋型納骨容器など,数多くの模(偽)造品が目にとまる。そのような小屋型納骨容器は,紀元前9• 8世紀の,エトルリアの鉄器時代初期の所謂ヴィッラノーヴァ文化やアルバーニ丘陵を中心とするラティウム文化に特有のものであり,同時期の楕円形の小屋型住居(例えばローマのパラティーノの丘の遺構)の基本的構造を一少し様式化されているとはいえー反映している。天理参考館の小屋型納骨容器は,線状や波状の刻線文様や突起する支柱や垂木,そして特にアンテフィクスとしての人間頭部やアクロテリオンとしての鳥など,豪華な立体装飾に特徴付けられるが,このような飾りは,実際の建築においてはテラコッタ製であったと思われる。しかし,これほど過剰な立体装飾は,エトルリアやラティウム地方出土のオリジナルの小屋型納骨容器では勿論例証されない。それに,アンテフィクスとして使われている人間頭部は,もうすでに,紀元前6世紀のアルカイック様式を示しているのである。したがってこれは,19世紀にはすでに活発に活動していたイタリアの偽造専門の工房で作られた紛物“Pasticcio(寄せ集め)”にすぎない。翻訳:シュタイングレーバー・大槻泉-578-

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