第1書ないし『指針』人体の形態と構造(Sanpaolesi)(注17),デッリンノチェンティ(Degl'Innocenti)(注18)などの他,I ホイヘンス稿本の概要とその第一葉23)として出版された時パノフスキーによって内容の上から五書に区分され,それぞ第2書ないし『指針』人体の運動理論第3書ないし『指針』転換,即ち平行投象第4書ないし『指針』プロポーション理論第5書ないし『指針』遠近法理論近年のヴェルトマン(Veltman)(注19)や我が国の篠塚二三男氏の研究(注20)が挙げられるであろう。幾何比例に基づいた遠近法の具体的作例であったレオナルドの「マギの礼拝」背景図は,辻茂教授が「天使の遠近法」(注21)と名づけた対角線法による作図であり,この作図法の対角線が4本,平行線で存在していることを最初に指摘したのはサンパオレージであった(注22)。本稿ではこの平行な対角線が何故4本になっているのかを,上記の命題から明らかにすることを目的としている。即ち,この命題は「マギの礼拝」背景図の作図について,近年,篠塚二三男氏が解明した数理的な内容とホイヘンス稿本の第1葉の遠近法の基本図との関連を明らかにする糸口になると考えられるからである。レオナルドの技法理論を再考するうえで核となる,ホイヘンス稿本の第1葉に示された遠近法の作図のもつ意味について検討したい。近年,辻茂教授によって初めて理論的に明らかにされてきたルネッサンスの遠近法研究を踏まえて,筆者の研究がレオナルドの遠近法の解釈に寄与するものとなれば幸いである。この研究で取り上げる「ホイヘンス稿本」は1940年にワールブルク研究年報(注れに簡潔な表題が付けられている。今ここにその構成を示すと,内容上から以下の5つの本に区分されている。このホイヘンス稿本の構成は,第1書の第1葉(解剖学的正位で示された人体に身体各部の比例関係を示した幾何学的晶本図形)に示された人間の形態にはじまって,それから順次段階を追ってキネティックな運動を示すもの(第2書),図学的なもの(第3書),美術解剖学的なもの(第4書)から,遠近法の技法(第5書)へと展開してゆき,ュークリッドの『幾何学原論』(注24)の構成にも似たメソジカルな性格が-610 -
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