れている基準は,全体の長さに対して各部分の長さが幾つ取れるかを示した,いわゆる「分数方式」のシンメトリアの尺度で示されている。この記述は図の左下で,ヴィトルヴィウスの比例碁準を示したモジュールとなる基本尺度に対応する。この記述と左右対称になるように,右側に“Delmoto"として25行に渡って[a]から[o]までの14項目の可動部分と,腰椎の両端の中継地点(1),(2)が“pontedi moto"として,示されている。この辺の比率が1対2の矩形の左下には,身体各部の比例の基本尺度として“cubito"で示されるクビト尺の長さを示した目盛がある。この尺度の下には2行にわたって“basaet piede/facia, testa"と記入され,各々の長さが与えられている。この基本尺度に引き続き右側には,地面を示している直線が“lineadel piano naturale et distantia"として示され,その下に図の表題“Primafigura del disegno trovato dal'mo"が書かれている。II ダブルスクエアーのフィオゲネシスホイヘンス稿本第一葉の模式図は,1対2の辺の比をもつ矩形として描いたものである。辺の比1対2の矩形とその対角線について,以下の二つの命題で示される幾何学的な特質が存在している。この図の持つ特質は,レオナルドの『人体権衡図』の比例システムの解釈の碁礎となった命題と,稿本第1葉との関連を示し,レオナルドの遠近法のシステムを検討するうえで,前提となっている。この図の一対の対角線とそれを切断している破線は,ホイヘンス稿本の第1葉を解釈するうえで大きな意味を持っているが,具体的な解釈は第1葉を取り扱った次章で検討する。正方形の1辺をモジュールとして,辺が1対2の比率となる矩形と直径1の単位円を与えられたとき,この矩形の対角線上にはコンパスをつかって,黄金比の等比数列を幾何学的に作図することができる。筆者によって初めて証明されている「ダブルスクェアーのフィオゲネシス」(注27)と命名された作図方法の発見者は,レオナルドであったと推定される。「ダプルスクエアーのフィオゲネシス」命題[命題1] 辺の長さの比1対2の矩形が与えられ,この矩形の長辺を2等分する点を結ぶ直線を引いて2つの正方形を作る。この直線上に直径1の単位円が与えられたとする。このとき矩形の対角線の始点から矩形の2辺の長さ1と2でこの対角線を切断した点-612-
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