鹿島美術研究 年報第15号別冊(1998)
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象にすべきかの迷いがあったようである。これに比べて,社会経済史,法制史,地域史はもとより,日常生活や感性を主とするフランス・アナール派の著作の翻訳も多い西洋中世史の裾野の広さは圧倒的であり,改めて日本における西洋美術研究や,大学における教育システムの在り方を反省するよい機会となった。その意味で,ピエール・トゥベール教授との同時招聘の実現に多大の協力をいただいた,名古屋大学文学部史学科の佐藤彰ー教授にも感謝する次第である。報告者としては,数年来,この同時招聘を実現すべく以前の同僚である佐藤教授と相談,調整にあたってきたため,鹿島美術財団からの多額のご援助が何にもまして貴重であり,深い感謝を捧げさせて頂きたい。なお,余談ではあるが,ご夫妻は浮世絵をはじめ版画に造詣が深く,滞在の最終日には,銀座鳩居堂でさまざまな和紙や,日本絵の具,折り紙など(お孫さんのお土産)を求められ,大変満足された様子であった。この他,京都では京都国立博物館で開催中の桃山美術展を,奈良では東大寺開山堂の平岡夫妻の案内により,正倉院展その他の杜寺の見学を,おりからの秋晴れの中,心から満喫された。無事帰国を知らせるファックスの中にも,鹿島美術財団への心からの謝辞が記されていたことを,最後に申し添えさせて頂く。-675-

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