2)日本研究部門の成果と私の研究発表~奈良時代における隋•初唐·盛唐の絵画技法や様式の伝来・習得から,それが平安ット学,インド・ヒンディー,仏教学,東南アジア,日本,中国,朝鮮,東洋全般の近現代史など20部門に及び,さらに後述する敦煙・トルファン研究を始めコンピューター利用研究まで5種の特別セミナーが加えられるという充実ぶりであった。そして最終の12日出午前には閉会式があり,次の第36回ICANASは2000年にカナダ(仏語圏)のモレアルで開催の旨が正式発表され,さらに午後歓送レセプションがあって友好裡に今学会の幕を閉じたのである。ハンガリーは民族的にも日本に対し特殊な親近感を懐いており,学者の招聘,交換も行われてきた。それだけに今回の会議では日本研究部門に対する期待が大き.<,日本もこれに答えて多数の参加者がプダペストに赴いた上,東方学会や国際交流基金から主催者側に各種の援助が行われた。日本研究のなかで特に重点をおいて準備されたのは,日本文化の諸領域における「日本化」の問題についてのパネルであった。そこでは座長である石塚晴通氏の「概論」に始まり,高崎直道氏の「仏教」,私の「美術」,築島裕氏の「片仮名」などについて8名の発表が続いた。私は時間の制限もあり,「絵画における日本化一古代から中世ヘー」と題して飛鳥時代特に10世紀に入って次第に日本人の感覚に即した身近かな自然や四季折々の風物,貴賤男女の生活を写しだすようになる過程をまず説明した。そしてこうした主題上の変化が絵画表現や技法の上にも反映し,いわゆる「やまと絵」が生まれること,しかもこれが文芸における和歌の隆盛や「仮名物語」の発生と深く結びあっていることを,代表的作例のスライドによって示してゆく。そこでは「源氏物語絵巻」中に描き込まれた屏風絵や障子絵と現存の「山水屏風」を併せ観察し,また「源氏物語絵巻」とこれに続く「信貴山縁起絵巻」や「伴大納言絵巻」の構成や技法上の相違をも眺めることで,絵画における「日本化」が,この10■12世紀の間にいかに豊かに達成されたかを要約し理解してもらえたものと考える(その内容はこの報告書付載の英文原稿を参照されたい)。日本研究部門ではこのパネルのほか,さらに宗教,武道,音楽,文学,言語,歴史,哲学,教育,対外関係などの部会が行われ,諸外国からの発表者も多かった。なお特記すべきは,国際交流基金の援助と日本考古学協会の提供による「最近における-677-
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