3)その他の研究活動日本の考古学的発掘成果」のカラーパネル展示が,会議場に程近いブダペスト・ギャラリーで開催されたことである。これはプレ縄文期から近世まで主要遺跡31箇所を体系的に総覧させ,赤外線写真や磁気探査法などの科学的方法の活用をも示したもので,特派された専門学者の臨場説明もあり,各国人の注目を集めた。7日朝,日本大使館主催の開場式には私も出席させていただいた。上記日本研究部門の発表でも私の研究と関係の少ない主題の場合は,時間調整の許す限り,他部門のうち興味ある研究成果の聴講に努めた。中でも特別セミナー「敦煙・トルファン研究」は重要で,第1部「20世紀におけるシルク・ロード考古学」ではスタインの未発表書簡の紹介や晩年のペリオの言説についての想い出など,また新しい研究結果としては,ベルリン,ダーレム美術館所蔵のトルファン絵画(特にル・コック,グリュンウェーデル将来の絹絵断片)の新資料にもとづくマニ教美術の判定や,中央アジア美術に示された諸宗教融合の作例提示など今後の研究に示唆するところが大きいと思われた。一方,ダニュープ河対岸の丘上に従える旧王宮内に設けられた歴史博物館の陳列や復元改装工事の終了した応用美術館の整然たる展示を眼にしたことで,前回(1993年末)外務省からの日本美術巡回講演依頼でブダペストを訪れた際の欠を補い得た。さらにまたこの地の日本美術品コレクション中でも注目すべき江戸初期の優作「源氏物語画帖」の伝来について,明治初年日本を訪れたハンガリー人画家に大隈重信伯から肖像画のお礼として贈られたものという記録を教示されたことも幸せであった。-678-
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