—日本とヨーロッパの視点から―-683_ ② 国際会議名:美術における「名作/マスターピース」とは何か期間:1997年9月6日〜9月8日出張国:イギリス報告者:東京大学文学部教授河野元昭この国際会議「美術における『名作/マスターピース』とは何か一日本とヨーロッパの視点から一」は,9月6日から8日にわたり,英国ノーリッジのイースト・アングリア大学セインズベリー視覚芸術センターにおいて行なわれた。それは美術史研究上きわめて意義深いものであり,大いなる成功裏に終了したということができる。日本からは,鹿島美術財団による「美術に関する国際交流援助」を得て,10人の研究者が参加して発表することができた。本国際会議の成功は,われわれの参加によるところが少なくないと自負している。この国際会議は,イースト・アングリア大学教授ジョン・オナイアン氏および同助教授ニコル・ルマニエール氏によって企画された。両者はヨーロッパを代表する人文科学者であるのみならず,同じ大学に所属し,オナイアン氏は西洋美術史を,ルマニエール氏は日本美術史を専門分野としている。つまり,日本とヨーロッパの両視点から「名作/マスターピース」というものを考察しようとする本国際会議の主催者として,これ以上ふさわしい美術史研究者はいないであろう。しかも,日本とヨーロッパの両美術史にわたってすぐれた見識を有する国立西洋美術館館長高階秀爾氏が,計画の段階から主催者側と入念な協議を重ねてきた。これも本国際会議成功の大きな理由であること,改めて指摘するまでもない。われわれは今までただ何となく,すでに高い評価を与えられていた美術作品を名作と呼び,傑作と考えてきた。しかし,それらは何ゆえ名作なのだろうか。どのようにして名作という概念が生れてきたのだろうか。それらに共通する性格は存在するのだろうか。それらは将来にわたって名作であり続けるのであろうか。これらは美術史の根幹にかかわる問題であるはずだが,これまでほとんど顧みられることがなかった。この国際会議では,以上の問題を広い視野に立って,理論的かつ実証的に考察することが行なわれた。もっとも,これを西欧美術のある分野に限定して研究した成果はす(The Nature of the Masterpiece in Japan and Europe)
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