鹿島美術研究 年報第16号別冊(1999)
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6.類型一一一現地での調査,また平面図等の未だ紹介されていない施設について,各道)も,こうした後代のヴイア・クルーチスの付加現象と関連するものであろう。機関,ないしは個人より提供頂いた諸資料により,列挙した24の総体について,ほぼ外観の類型の分類が可能となったので,サクロ・モンテに具体的な外観のイメージを与えるために,類型についても言及しておきたい。“サクロ・モンテ”(直訳すれば“聖なる山”)が,いずれも,山上や正上の高所に設立された施設であることはその名称から容易に想像されるが,個々の施設の礼拝堂の配置には豊かなヴァリエーションが見られる。しかし,細部の相違を別にすれば,サクロ・モンテの形態は主に三つのタイプ,1 )台地上(あるいは山上,丘上)に礼拝堂が展開されるタイプ,2)斜面上に礼拝堂が展開されるタイプ,3)教会堂の内部,ないしは教会堂に接続された建物内に礼拝堂が展開されるタイプに分類できょう。これらのタイプはまた,主題の変化や時代の流れに応じて,多彩なヴァリエーションを生み出していく。1 )の台地上タイプには,聖地の再現を目的としたもの,従って,特に礼拝順序の考慮されていないものと,トレント公会議後のサクロ・モンテの特徴である物語性を重視して順序の設定されたものとがある。仮にこれらをそれぞれ,台地巡遊(聖地再現)型,台地巡遊(ストーリー)型と名付けるならば,前者には,当初のヴァラッロのサクロ・モンテ,モンタイオーネの施設,後者には改造後のヴァラッロの施設群,クレア,オルタのサクロ・モンテが含まれる。さらに,カステルロットの施設もここに含まれものであろう。台地上に展開されるタイプには,その他,ヴァレーセのサクロ・モンテに影響されて,一定の間隔をおいてロザリオ状に礼拝堂を配するタイプがあり,これを点在型とするなら,これにも循環型と片道型が識別され,それぞれベルモンテとモンタの施設がこれらに該当している。また,後代には,礼拝堂がコンパクトに集中した形で提示される変種も生じ,環状型,馬蹄型,教会堂接続型が確認された。モンガルデイーノ,トッリチェッラ・ヴェルツアーテ,チェルヴェーノのサクロ・モンテがそれぞれこれらに対応している。続いて,2)の斜面上に礼拝堂が展開されるタイプは,トレント公会議後に出現するもので,傾斜の大小を別にすれば,17世紀に創設されたサクロ・モンテの大部分がこの型を踏襲しているのが観察される。最後に,3)の堂内展開型の例としては,ガッリアーテ,ボルゴセージア,コッジ-93-

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