鹿島美術研究 年報第16号別冊(1999)
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つ山⑮ ニューヨーク唱アート・ステューデンツ・リーグに学んだ日本人美術家たち研究者:愛知県美術館はじめにニューヨークのアート・ステューデンツ・リーグ(ArtStudents League)は,アメリカで最も重要な美術学校のーっとして知られている〔図l〕。同校は1875年,当時一時閉鎖されていたナショナル・アカデミー・オブ・デザインのメンバーによって設立された。この学校の特徴は,学生のなかから選ばれた評議員が合議制によって教師を招聴するということ,そして学生たちは,受講したい教師が担当する科目を自由に選択して学ぶことができるということにあった。それは,確固としたカリキュラムをもって組織的な運営がなされている学校というよりも,むしろ自主的な運営を特徴とする規模の大きな画塾が,美術学校としての役割を果たしてきたということができる。そして,百年をこえる歴史のなかで,アメリカ人に限らず実に多くの学生が同校で学んだのである。これは日本人とて例外ではなく,荻原守衛,国吉康雄,清水登之,石垣栄太郎,北川民次など,重要な美術家たちがここに学んだことが知られている。これらアート・ステューデンツ・リーグに学んだ日本人たちの在籍状況は,これまでは各美術家の側で編まれた経歴からしか知ることができなかった。これは同校が,これまでは在学した学生たちに関して,ごく限られた情報しか公開してこなかったことが大きな要因となっていた。つまり,学校側の記録から,総合的に各美術家にアプローチすることはできなかったのである。経緯今回の調査は,同校の長い歴史のなかでも初めて特別な許可と協力を得て実施することができたものである。調査に至る経緯を簡単に記しておく。共同研究の代表,村田がはじめて同校を訪れたのは1995年のことで,愛知県美術館と笠間日動美術館で1996年から1997年にかけて開催した北川民次展の準備調査のためであった。彼が,同校でジョン・スローン(JohnSloan)に学んだということは本人の著作などから知られていたが,詳しい在籍年次や受講科目は不明のままであった。そこで,北川が在籍した当郡山市立美術館フィラデルフィア美術館研究員木下京子主任学芸員村田真宏学芸員宮本高明

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