家によって制作されたとされる。本稿において言及した三点の挿絵はいずれもアヴリルがこの画家の作であると指摘した挿絵である。F.Avril,“Quelques conside rations sur l’口氏utionmaterielle des enluminures d巴l’Apocalyps巴deSaint-Sever", Actas de! Simposio para el estudio de las codices de! “Comentario al Apocal伊sis”deBea-to de Liebana, t. I, Madrid, 1980, pp. 261-271 (叫犬の首輪,カプリコルヌスの鰭,蛇をつつくカラスの図像は,F-12117写本のみならず,ザンクト・ガレン修道院所蔵のS-250,S 902写本やリモージ、ユにおいて制作されたF5239, L 15写本などにも認められる特徴である。これらの挿絵の様式,描法,細部の特徴は,サン・スヴェール写本挿絵における一連の動物の表現の特徴とは異なっており,その直接のモデルとなったとは考え難いが,このような星座図像を収録した見本帳のようなものが広く流布しており,サン・スヴェール写本の画家がこのようなものを参照したという可能性も否定できない。また,RI写本群の中でも,とくにザンクト・ガレン修道院所蔵のこの二点の写本の星座図像が,サン・ジェルマン・デ・プレ,サン・ドニ修道院で制作された二点の写本の一連の図像との類似性を示しているが,これらの修道院の間で,9世紀以降,写字生・画家の移動や写本の交換など活発な交流が行なわれていたことを考慮すれば,後者の写本群の図像の形成に前者の二つの写本の星座図像が影響を与えた可能性も低くはないと考えられる。242
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