鹿島美術研究 年報第16号別冊(1999)
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注年吋。。ハUつω(1) 永藤靖「日本古代文学における異界」明治大学人文科学研究所『明治大学公開文(2) 源豊宗「玄英三蔵絵綜説」『新修日本絵巻物全集15玄英三蔵絵J角川書店,1977(3) 『続日本の絵巻19彦火々出見尊絵巻浦島明神縁起』中央公論社,1992年(4)小松茂美「『吉備大臣入唐絵巻J考証」『日本絵巻大成3吉備大巨人唐絵巻』中央(5) 『日本の染織5更紗異国情緒を染めた布J泰流社,1975年(6) 若杉準治「吉備大臣入唐絵詞J『日本の美術297絵巻=伴大納言絵と吉備入唐絵』た。そこでまず用いられたのが械盤・錦などの敷物等の舶来文物である。これらは異国を題材として描いた絵画から抽出して用いられたり,または日本に舶来していた異国の文物をもとにして絵画化されたものであった。また,細かい文様なども巧みに利用し,異国性を表すための一手段として欠かせないものであったことも注意される。特に異界性を強調するのに利用されたのは湧雲(霊芝雲)であり,雲の表現には夢,霊験などの非日常性の強調という意味付けがなされていることは重要である。その他にも異国を示す手段としては,舶来の技法である水墨技法を用いるなど,様々な工夫がうかがえる。画家は描く対象の異国を現実に目のあたりにすることはなかったものの,様々な工夫と努力によりそれと示すべく力量を発揮したのであった。特に13世紀から14世紀にかけては,異国を舞台とした絵巻物が少なくないが,これは当時の人々がいかに異国に対し憧れと興味の念を抱いていたかという表れでもある。画家が描いた異国は必ずしも事実と正確であったとはいえないが,それがより一層現実離れした異国情緒にあふれる情景となったことも否めない。今回の研究の中心となったのは,主に雲の役割と舶来文物のー題材として描かれた染織品と文様であったが,今後も異国を描いた絵巻物のもつ課題についてさらなる研究を進める所存である。化講座医異国』風間書房,1990年彦火々出見尊絵は12世紀後期に描かれた原本は失われたが,原本に忠実にしたがい模写した江戸時代初期の御用絵師狩野種泰による模写本が,現在福井県明通寺に所蔵される。公論社,1977年

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