に1基づっ,ほぼ実物大の大きさの衣桁(扉風の場合もある)を正面向きかやや右斜(A) 座敷内に置かれた衣桁の傍らに遊女と禿と思われる女性が描き添えられる,い(B) 背景は室内光景で,衣桁周辺に文机,碁盤,双六盤,手拭い掛けなどの調度が作品は殆ど金地著色の六曲一双扉風で,現在一隻だけのものも,他作品の構図との比較で元々一双形式であった可能性が強い。基本的構図は大部分の作品が共通し,類型化している。すなわち,構図は六曲扉風の特性であるの横長い画面の中に,左右隻めに配置し,衣桁の上下の段に各6'7領づっ小袖を並列的に掛け並べる,というものが基本的と思われる。衣桁の縦横の直線や,小袖の正方形や三角形の単純化された幾何学的フォルムと小袖の精彩な描写の対照が,造形的意図を強く感じさせる。ところで構図を考察する際,扉風の左右隻の配置に疑問を生じるかと思う。特に背景が総金地の図様は,入れ替えても左右隻の図様の連続性がないので判断できない。人によっては左右端に衣桁を寄せ,中央に大きく空いた金地空間に,小袖の折り重なった状態を真上の視点から描いた部分がくる配置に,安定感を見るという意見があるかもしれない。確かにこの配置にすると,正面視した衣桁の部分に対し,そこだけ空間が一部摂じれた様になり,小袖がふわふわと空に浮遊する如き印象が強調される。この不思議な視点の小袖は,「誰ケ袖図jの見所の1つであろう。ニュートラルな金地空間の効果的用法という観点から見て,この配置の方が魅力的である。しかし,筆者はあえて前述とは反対の配置を基準として考えたい。その理由は後述する主葉に,衣桁背後に見える障子戸が中央で連続する構図の方が自然に思われ,また室内背景の図様が最初に成立した典型と考えるからである。この場合,画面中央で図様が多少断ち切れてしまう点が不審ではあるが,全体的に見て障子戸の水平線が左右に連続している方が構図として収まる気がする。あるいは,敷居の線は左右を入れ替えても連続するので,円環構図である可能性もある。二.作品分類総金地を背景に小袖を単一主題的に描いたものと,それに室内背景と調度類や人物を配したものなど,状況描写の相違によって,幾つかのグループに分けることができる。わゆる「誰ケ袖美人図J。飾られる。上層,富裕層の女性か高位の遊女の部屋を想像させる。室内風俗図-331-
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